東北大学と独マインツ大学による共同研究チームは、人工反強磁性体を用いて、「メロン」や「アンチメロン」「バイメロン」と呼ばれるトポロジカル磁気構造を作り分けることに成功した。反強磁性トポロジカル磁気構造を用い、電力消費が極めて少ないデバイスを実現することが可能となる。
東北大学電気通信研究所の土肥昂尭助教や独マインツ大学のMathias Klaui教授らによる共同研究チームは2024年2月、人工反強磁性体を用いて、「メロン」や「アンチメロン」「バイメロン」と呼ばれるトポロジカル磁気構造を作り分けることに成功したと発表した。反強磁性トポロジカル磁気構造を用い、電力消費が極めて少ないデバイスを実現することが可能となる。
トポロジカル磁気構造と呼ばれる磁気渦は熱安定性に優れており、情報処理技術への応用が期待されている。その一つが「磁気スキルミオン」である。この磁気構造を活用すれば、消費電力を大幅に削減できるといわれている。特に、反強磁性スキルミオンは、超高速動作に対する期待が高い。しかし、磁気スキルミオン以外の反強磁性トポロジカル磁気構造を安定させるために、どの材料系が適しているのかまでは明らかになっていなかった。
研究チームは今回、極薄の非磁性層を介して2枚の強磁性層を反強磁性的に結合させた「人工反強磁性体」を用い、スキルミオンとは異なるトポロジカル磁気構造を、3つの方法で観測した。まずX線を用い、用意した磁性多層膜が反強磁性結合をしていることを確認した。その後、スピン偏極電子顕微鏡および、磁気力顕微鏡を用いて磁気構造を観察した。
それぞれの測定結果を組み合わせ、反強磁性メロンやアンチメロンおよび、これらが結合したバイメロン構造が実現されていることを確認した。さらに、上下にある磁化の強さを変えると、渦の巻かれ方(ヘリシティ)が制御できることを実証した。つまり、磁性層の組み合わせを適切に選択すれば、求める反強磁性トポロジカル構造を実現できることになる。
さらに研究チームは理論モデルを用いて、これらの磁気構造に重要な因子を明らかにした。今回用いた人工反強磁性系では、磁性層間の強い結合によって、トポロジカル磁気構造を安定させるために必要な「ジャロシンスキー守谷相互作用(DMI)」を著しく下げていることが分かった。
東京大ら、磁気振動の情報を取り出す測定法を開発
東北大学ら、スピン波が伝わる方向を自在に制御
量子アニーリングマシンとMLを活用、新規化学材料の組成発見
東北大学、用途に合わせMTJ素子特性をカスタマイズ
トポロジカル磁性体の異常ネルンスト係数を制御
炭素繊維を一方向に配向した圧電プラスチックセンサーCopyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
記事ランキング