量子アニーリングマシンとMLを活用、新規化学材料の組成発見 : 製造工程の最適化などにも適用可能
東北大学の研究グループとLG Japan Labは、量子アニーリングマシンとベイズ的最適化と呼ばれる機械学習(ML)技術を連係し、これまで未探索であった目標特性値を持つ新規化学材料を発見した。今回の研究成果は、製造工程の最適化や生物分野などにも適用できるという。
東北大学大学院情報科学研究科の大関真之教授らによる研究グループとLG Japan Labは2024年1月、量子アニーリング(QA)マシンとベイズ的最適化と呼ばれる機械学習(ML)技術を連係し、これまで未探索であった目標特性値を持つ新規化学材料を発見したと発表した。今回の研究成果は、製造工程の最適化や生物分野などにも適用できるという。
材料の新規組成探索ではこれまで、さまざまな組み合わせを探索し、スパコンによるシミュレーションにより組成の物性評価を行ってきた。これらの作業には膨大な時間を要するのが課題となっていた。
こうした中で、組み合わせ最適化問題を効率よく解決する手法として、量子アニーリングマシンの活用が注目されてきた。これを利用するには、数式によるプログラミングが必要となる。ところが、ロボティクスや製造プロセスなどでは、明示的に数式で表現することが難しい分野もあった。
そこで研究グループは、量子アニーリングマシンを活用するに当たって、「計算速度」という視点ではなく、量子力学を利用した「効率的な探索性能」に注目した。この結果、量子アニーリングマシンとベイズ的最適化という枠組みを利用して、新たな化学材料を発見することに成功した。
量子アニーリングマシンとベイズ的最適化という枠組みを利用して発見した新規化学材料の組成。縦軸が得られた頻度、横軸が物性値[クリックで拡大] 出所:東北大学他
東日本大震災からの復興の象徴に――次世代放射光施設「ナノテラス」にかける思い
世界最高レベルの高輝度放射光施設として注目を集める「NanoTerasu(ナノテラス)」。2024年4月の本格稼働を前に、ナノテラス実現の立役者である東北大学 国際放射光イノベーション・スマート研究センター 高田昌樹教授に、ナノテラスの概要や誕生の背景を聞いた。
東北大学、用途に合わせMTJ素子特性をカスタマイズ
東北大学は、スピン移行トルク磁気抵抗メモリ(STT-MRAM)の記憶素子である磁気トンネル接合(MTJ)素子の特性を、用途に合わせてカスタマイズできる材料・構造技術を確立した。記録層に用いる材料の膜厚や積層回数を変えると、「高温でのデータ保持」はもとより「データの高速書き込み」にも対応できるという。
トポロジカル磁性体の異常ネルンスト係数を制御
東北大学と富山県立大学、物質・材料研究機構(NIMS)の研究グループは、汎用的な元素置換手法を用い、強磁性トポロジカル半金属の異常ネルンスト係数の符号を制御することに成功。これを基に符号の異なる薄膜を組み合わせたサーモパイル素子を作製し、ゼロ磁場下における熱電変換動作を確認した。
炭素繊維を一方向に配向した圧電プラスチックセンサー
東北大学と大阪工業大学の研究グループは、「一方向炭素繊維強化圧電プラスチックセンサー」を開発した。機械的強度に優れたモーションセンシングシステムを実現することが可能となる。
感度を一桁以上向上、テラヘルツ波検出素子を開発
東北大学と理化学研究所の研究グループは、インジウムリン系高電子移動度トランジスタ(HEMT)をベースとしたテラヘルツ波検出素子で、新たな検出原理が現れることを発見。この原理を適用して、検出感度を従来に比べ一桁以上も高めることに成功した。6G/7G超高速無線通信を実現するための要素技術として注目される。
5G/6G用電波は透過、遮熱メタマテリアルを開発
東北大学は、近赤外波長は反射し5G/6G用の電波(可視波長)は透過する、ナノ周期構造の「アルミ製遮熱メタマテリアル」を開発した。建物や自動車の窓ガラスに応用すれば、室内や車内の温度上昇による熱中症の発症や電力の消費量を抑えることが可能となる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.