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補助金の遅れや労働者不足……TSMCやIntelの米国新工場が直面する課題戦略の見直しを迫られる企業(1/2 ページ)

CHIPS法などによって自国内での半導体の製造を強化を狙う米国だが、その成果の象徴として扱われるTSMCのアリゾナ工場をはじめ、IntelやMicron Technologyなど工場建設の遅れが目立っている。本記事では新工場建設において企業が直面している課題についてまとめている。

» 2024年03月19日 13時30分 公開
[Pablo ValerioEE Times]

 米国による半導体の自国製造推進の象徴として歓迎されていたTSMCによる400億米ドル規模のアリゾナプロジェクトは、度重なる遅れに見舞われている。

 TSMCが米国アリゾナ州に建設する第1工場での生産は、現地の専門人材不足によって2025年に延期され、第2工場の立ち上げも、熟練人材不足および資金調達の不確実性を理由に、2027〜2028年になる見通しだという。

 Intelの200億米ドル規模のオハイオ州での新工場プロジェクトにも遅れが生じている。市場の課題や政府補助金の支給が遅れていることなどによって、生産開始は2026年後半になる見込みだ。

米国オハイオ州で建設中のIntelの新工場[クリックで拡大] 出所:Intel 米国オハイオ州で建設中のIntelの新工場 出所:Intel

 Microchip Technologyは、「CHIPS and Science Act」(CHIPS法)の資金提供を受けているにもかかわらず、販売不振による工場閉鎖を発表していて、現在の市場の不安定さを示す形となっている。

2023年の起工式に出席したJoe Biden米国大統領(右)とIntelCEO(最高経営責任者)のPat Gelsinger氏 出所:Intel 2023年の起工式に出席したJoe Biden米国大統領(右)とIntelCEO(最高経営責任者)のPat Gelsinger氏 出所:Intel

 Micron Technologyがバージニア州で計画しているメモリ工場プロジェクトも、こうした課題を避けられずにいる。進展はあるものの、他の企業と同様に、許可の確保や規制への対応のために建設の遅れが続いているのだ。

 CHIPS法は、米国内での半導体製造を促進するための補助金やその他の奨励措置に加え、工場や製造設備への投資に対する税額控除を承認している。米商務省によると、600以上の企業や団体が補助金に関心を示していて、これまで表明された民間投資の総額は2350億米ドルに上ると推定される。

市場の変動と戦略の見直し

 米国が自国内での半導体製造の増加を目指すきっかけとなったのは、パンデミックによる需要の急増だった。さらに、その後の深刻な半導体不足が、IntelやTSMCなどの大手企業による野心的な拡張計画につながった。しかし、現在の市場低迷によって、戦略の見直しを余儀なくされている。企業は不確実な需要に直面して、投資の見直しや生産スケジュールの延期を行い、収益性を優先している。こうした慎重なアプローチは、短期的には賢明であるが、長期的には生産能力強化の妨げになる可能性がある。

 このような好況と不況のサイクルは半導体業界では珍しいことではなく、数年にわたる半導体不足を経験したことで、大手自動車メーカーやEMSプロバイダーは60週間以上前に半導体を発注するようになった。半導体の需要が冷え込んだ今、エレクトロニクスサプライチェーンに残されたのは、過剰な半導体在庫と、半導体不足の最中に発表された数十のファブの新設計画だ。これらのファブの多くは、技術的に高度な半導体を生産する予定だが、その他のファブは、製造やパッケージング、材料センターとしての中国への依存を減らすことを目的としている。

 Intelのオハイオ新工場は、当初2025年の生産開始を目指していたが、大きな逆風に直面している。市場の変動により慎重な投資戦略が求められる一方で、労働力の確保や規制のハードル、政府からの資金提供の遅れが懸念され、さらなる課題が山積している。建設が開始し、Intelはこのコミットメントを維持しているものの、当初の生産開始目標を達成する可能性は低い。生産開始は2026年後半から(このような施設の一般的な建設スケジュールである)3〜5年の範囲になることが予想されている。

 Intelのエグゼクティブバイスプレジデント兼グローバルオペレーションチーフを務めるKeyvan Esfarjani氏は、「地政学的課題の増加や半導体需要の減少、インフレや景気後退圧力が世界経済を混乱させている。われわれは環境の急激な変化を認識しながら、世界の半導体供給のバランスを調整し、将来に備えるための投資を行わなければならない」と語っている。

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