自動車用先端SoC技術研究会(Advanced SoC Research for Automotive/ASRA)は2024年3月29日、記者説明会を開催し、車載用SoC(System on Chip)の開発計画などについて語った。スズキと日立AstemoがASRAに加入したことも併せて発表し、「設立当初から参画を予定していた14社がようやく出そろった」とコメントした。
自動車用先端SoC技術研究会(Advanced SoC Research for Automotive/ASRA)は2024年3月29日、新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下、NEDO)の「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業/先端半導体製造技術の開発(委託)」の公募に対し、「先端SoC(System on Chip)チップレットの研究開発」を提案し、委託先として採択されたと発表した。初年度(2024年度)は10億円の補助金が付与される。事業期間は5年間で、補助金の金額は前年度の実績に応じて変動するという。
ASRAは2023年12月1日、チップレットをベースにした高性能の車載用SoCの研究開発を目指し、トヨタ自動車やデンソー、ルネサス エレクトロニクスなど、自動車メーカー、電装部品メーカー、半導体関連企業12社が集まって発足した組織だ。
今回、NEDOの委託事業として採択された「先端SoCチップレットの研究開発」では、自動車のさらなる知能化/電動化を支える車載ハイパフォーマンス・コンピュータの実現に向けて、チップレット技術を車載に応用するための研究開発に取り組む。
ASRA 理事長の山本圭司氏(トヨタ自動車 シニアフェロー)は、ASRAの意義について「『日本の半導体業界を盛り上げたい』というのが自動車メーカーの総意だ。これからの自動車の性能は、半導体の性能に直結する。しかし、半導体分野においては海外の方が先行しているため、現状は海外の半導体メーカーが作った半導体に合わせて自動車を作らざるを得ない」とした上で、「自動車/半導体業界が一体となって車載用SoCの開発に取り組むことで、単にSoCの性能だけでなく、最終製品の自動車での活用を視野に入れた半導体開発が可能だ。これにより、日本の自動車メーカーが作りたい自動車を作りたいタイミングで作れるようになる」と語った。
ASRAは、自動車メーカーを中心とした「車載システムアーキテクチャWG」、Tier1からなる「SoCアーキテクチャWG」、半導体ベンダーやEDA(Electric Design Automation)ベンダーが担う「チップレット技術WG」の3つのワーキンググループに分けて研究開発を進める。会見では、チップレットベースの車載SoCに必要な技術開発として、複数チップレットをシームレスに接続するためのハードウェア/ソフトウェア技術、機能安全/リアルタイムを実現するハードウェア/ソフトウェア技術、車載信頼性要件を満たすパッケージング技術の3つを挙げた。
今後の研究開発計画について、ASRA専務理事の川原伸章氏(デンソー シニアアドバイザー)は「2024年度は車両のアーキテクチャおよびチップレットSoCのハードウェア/ソフトウェアの要件定義を行う。2025年度以降に2回の試作を行い、2030年以降に量産車への搭載を目指している」と説明した。
SoCの技術世代については、「2〜3nmの採用も考えている。1回目の試作にはRapidusは間に合わないため海外製品の使用を検討しているが、将来的にはRapidusとの連携も視野に入れている」とコメント。開発コストに関しては「車載用SoC開発の前例がないため、正確な予測は難しいが、数百億円規模になるだろう」とし、財源について「全て国からの支援に頼るのか、その他の方法で集めるのかは今後検討する」(川原氏)と補足した。
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