名城大学と産業技術総合研究所は、発振波長420nmのGaN(窒化ガリウム)面発光レーザーにおいて、膜厚制御の精度を従来に比べ約一桁高めることにより、20%を超える電力変換効率(WPE)を実現した。
名城大学理工学部材料機能工学科の竹内哲也教授と上山智教授、岩谷素顕教授および、産業技術総合研究所先端半導体研究センターの亀井利浩研究主幹らによる研究グループは2024年4月、発振波長420nmのGaN(窒化ガリウム)面発光レーザーにおいて、膜厚制御の精度を従来に比べ約一桁高めることにより、20%を超える電力変換効率(WPE)を実現したと発表した。
名城大学は、2015年にGaN面発光レーザーの室温連続動作に成功。2017年には電力変換効率5%を実現してきた。ところが、これまでの製造プロセスでは膜厚の制御が十分ではなく、効率を大きく改善するまでは至らなかったという。
研究グループは今回、GaAs(ガリウムヒ素)赤外面発光レーザーの製造プロセスで用いられている「その場膜厚制御」と呼ばれる手法に注目した。「素子の半導体層構造を結晶成長させながら、成長させた膜厚を反射率スペクトルで把握し、必要な膜厚に到達した時点で成長を終了させる」という方法だ。
この方法を適用するため、GaNで形成された共振器の共振波長に対する温度依存性を事前に調べた。これにより、成長温度では共振波長が20nm程度長波長化することが分かった。そこで、反射率強度プロファイルを確認しながら結晶を成長させ、目指す層厚(3.7λ)に達した時点で結晶成長を終わらせた。
高い精度を可能にした「その場膜厚制御」に加え、「GaInN下地層による発光特性の改善」や「比較的小さい発光径(直径5μm)を採用」するなどして、面発光レーザーを作製した。この結果、発光径が小さい(5〜8μm)素子では10mW以上の高い光出力が得られた。これまで10%台であったGaN面発光レーザーの電力変換効率も20%以上に向上した。発振波長は設計値の418nmに対し、実測値では417.7nm(8μm径素子)となるなど、極めて小さい誤差であった。
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