名城大学と三重大学、ウシオ電機および、西進商事の研究グループは、高い光出力が得られる「縦型AlGaN系深紫外(UV-B)半導体レーザー」を開発した。光出力は1素子で1Wを超える見通し。素子を集積化すれば光出力が数十〜数百Wのレーザー光源を実現できるとみている。
名城大学と三重大学、ウシオ電機および、西進商事の研究グループは2023年10月、高い光出力が得られる「縦型AlGaN系深紫外(UV-B)半導体レーザー」を開発したと発表した。光出力は1素子で1Wを超える見通し。素子を集積化すれば光出力が数十〜数百Wのレーザー光源を実現できるとみている。
深紫外線とは、レーザーの発振波長が300nm以下の電磁波である。中でも波長が280〜315nmのものは「UV-B」に分類されている。半導体レーザーは、固体レーザーに比べ小型で長寿命、低消費電力、高効率といった多くの特長を持つ。ただ、室温で紫外線を放射するAlGaN系半導体レーザーは、その光出力が最高でも150mW程度にとどまっていた。
従来のAlGaN系紫外半導体レーザーは、デバイス内で薄膜のn型AlGaNを電流が横方向に流れる構造となっている。このため、電流を均一に流すことが難しく、デバイスのサイズを大きくして、注入電流を増やすことが難しかったという。
そこで研究グループは、pn接合に対してp電極とn電極を対向配置した縦型デバイスの開発に取り組んだ。これを実現するため、主に3つの技術を開発した。「絶縁性の基板をはがす技術」と「半導体プロセス技術」および、「光共振器の形成技術」である。
1つ目の「絶縁性の基板をはがす技術」については、三重大学がサファイア基板上の高品質AlNを作製した。ナノインプリントリソグラフィーとプラズマエッチングにより周期的なAlNナノピラーを形成したのは名城大学で、その上にAlGaN系のレーザー構造を積層した。
そして西進商事が、固体パルスレーザーを用いてAlNとAlGaN界面の結晶を分解し、デバイス構造のみをはがす手法を開発した。これは「レーザーリフトオフ法」と呼ばれる方法である。ところが、AlGaNではAlドロップレットが形成され、結晶の破壊を引き起こす要因となっていた。そこで今回は、AlNナノピラーとパルス固体レーザーを用いることによって、これまでの課題を解決できたという。
2つ目の「半導体プロセス技術」開発は、名城大学とウシオ電機が共同で行った。電極や絶縁層、電流狭窄(きょうさく)構造などを設計通りに製造する技術を開発した。これによって、レーザー発振に必要なデバイス構造を実現した。3つ目の「光共振器の形成技術」については、名城大学がブレードを用いたへき開法を開発し、光共振器を形成することに成功した。
作製した縦型AlGaN系深紫外半導体レーザーを、室温環境でパルス駆動させたところ、極めて鋭い発光スペクトル、TE偏光特性、スポット状の発光パターンといったレーザー特有の特性を確認することができた。発振波長は298.1nmで、UV-B領域に相当するという。
今回の研究成果は、名城大学理工学部材料機能工学科の岩谷素顕教授や竹内哲也教授、上山智教授、三重大学大学院工学研究科の三宅秀人教授、ウシオ電機および、西進商事の研究グループによるものである。
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