メディア

微弱な連続光レーザーでも高い効率で波長変換原子層ナノ物質と微小光共振器で

理化学研究所(理研)は、原子層ナノ物質を高Q値微小光共振器上に転写することで、微弱な連続光レーザーでも2次の非線形波長変換が効率よく行えることを実証した。

» 2024年04月10日 15時30分 公開
[馬本隆綱EE Times Japan]

波長範囲500〜800nmの可視光帯で波長変換を実証

 理化学研究所(理研)は2024年4月、原子層ナノ物質を高Q値微小光共振器上に転写することで、微弱な連続光レーザーでも2次の非線形波長変換が効率よく行えることを実証した。

 セレン化タングステンなどの遷移金属ダイカルコゲナイドは、単層で良質な直接遷移型の半導体特性を示し、厚みも約0.7nmというナノ材料である。その上、非線形光学結晶に匹敵する巨大な非線形光学係数を有するため、次世代半導体などの用途で注目されている。

 一方、高Q値シリカ微小光共振器は直径が数十マイクロメートル〜数ミリメートルという小さな光素子。光を共鳴的に閉じ込めると、微小な入力光で効率の良い波長変換が可能となる。ただ、シリカガラスでは基本波から2倍波への波長変換(第二高調波発生)や和周波発生などに応用することが難しかったという。

 研究グループは今回、2次元ナノ物質と微小光共振器を組み合わせたハイブリッドデバイスを作製し、従来の課題解決に取り組んだ。

2次元ナノ物質と高Q値微小共振器のハイブリッドデバイス 2次元ナノ物質と高Q値微小共振器のハイブリッドデバイス[クリックで拡大] 出所:理研

 実験ではまず、単層に剥がれたセレン化タングステンを、高Q値シリカ微小光共振器上に転写した。光テーパファイバー導波路を用いた透過スペクトル測定により、作製したデバイスのQ値を評価した。この結果、転写前では、転写後に比べ1桁ほど低下した。それでも、約1000万という高いQ値となった。

 次に、作製したデバイスを用い、同じ導波路を用い通信波長帯の連続光レーザーで励起し、可視光帯に感度を持つ分光器で波長変換光を観測した。この結果、励起光の波長(1545.5nm)に対し、半分の773nm付近に大きなピークが現れ、第二高調波が発生していることを確認した。

 また、波長が異なる2つのレーザーを同時励起し、励起エネルギーの和に相当する波長にも、はっきりと信号を確認できた。これは、第二高調波とは別の、和周波発生と呼ばれる波長変換過程によるものである。

励起光と観測された信号光(波長変換光)の光スペクトル 励起光と観測された信号光(波長変換光)の光スペクトル[クリックで拡大] 出所:理研

 これらの実験結果は、原子レベルの薄い2次元ナノ物質と微小光共振器の光電界モードとの間で、強い相互作用が生じているためだという。研究グループは、2層や3層のセレン化タングステンを転写したデバイスを作製し比較した。これにより、単層と3層を転写したデバイスでは励起波長の全域で第二高調波発生が起きていることを確認した。ところが、2層を転写したデバイスでははっきりと信号を観測できなかった。これは、「空間反転対称性の破れが奇数層のみに現れる」という、理論的な予測と一致する。

第二高調波の光強度の層数依存性 第二高調波の光強度の層数依存性[クリックで拡大] 出所:理研

 さらに、転写する単層セレン化タングステンの大きさと微小光共振器上の位置を変えると、2次と3次における非線形光学効果の強さを制御できることが分かった。この手法を用い、波長範囲500〜800nmの可視光帯で波長変換が行えることを実証した。

 今回の研究成果は、理研光量子工学研究センター量子オプトエレクトロニクス研究チームの加藤雄一郎チームリーダー(理研開拓研究本部加藤ナノ量子フォトニクス研究室の主任研究員)や、藤井瞬基礎科学特別研究員(現在は慶應義塾大学理工学部物理学科助教)らの共同研究グループによるものである。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

RSSフィード

公式SNS

All material on this site Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
This site contains articles under license from AspenCore LLC.