「4.1.3.3 信頼性」の概要を説明する。前回の「振動対策」と「クラック対策」に続き、今回は「電蝕対策」の内容を解説する。
電子情報技術産業協会(JEITA)が3年ぶりに実装技術ロードマップを更新し、「2022年度版 実装技術ロードマップ」(書籍)を2022年7月に発行した。本コラムではロードマップの策定を担当したJEITA Jisso技術ロードマップ専門委員会の協力を得て、ロードマップの概要を本コラムの第377回からシリーズで紹介している。
第448回からは、第4章「電子部品」の概要説明を始めた。前回は「4.1.3 部品実装・設計時の注意点」の3番目の項目である「4.1.3.3 信頼性」から、「(1)振動対策」と「(2)クラック対策」の概要を報告した。今回は「(3)電蝕対策」の概要をご説明する。
「(3)電蝕対策」は「(a)イオンマイグレーション」「(b)電蝕」「(c)硫化」の3つの現象と対策で構成される。いずれも抵抗器の電極で発生し、短絡不良あるいは断線不良の原因となる。
電子部品の電極には、さまざまな金属が使われる。金属は水分によってイオン化し、電界によって移動する。この移動現象を「イオンマイグレーション」と呼ぶ。
電極材料に良く使われる銀(Ag)は、抵抗率の低い材料として知られる。一方で非常にイオン化しやすい材料でもある。厚膜チップ抵抗器は内部電極にAgを使っており、Agのイオンマイグレーションが発生すると短絡不良を起こす可能性がある。不良に至るメカニズムを以下に示そう。
抵抗器内部に水分が侵入することによって陽極のAgがイオン化し、陰極に向かって移動しようとする。水分が陽極と陰極の両方をつなぐように存在していると、陰極に達したAgイオンが還元析出によってデンドライト(樹枝状結晶)を発生させる。デンドライトは、陽極方向に伸びていく。Agイオンの還元析出が繰り返されると、デンドライトは陽極に達し、短絡不良を引き起こす。
部品側の対策としては、Ag電極をガラスや保護膜、めっきなどで覆う、保護膜の密着強度を上げて抵抗器内部に水分が入らないようにする、銀(Ag)にパラジウム(Pd)を加えてAgPd合金とする(水分が侵入しても溶け出しにくい)、などが実施されている。実装側の対策としてはコーティング、ポッティング、モールド、ハーメチックシールなどがある。
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