横浜国立大学とカリフォルニア工科大学の研究グループは、遷移金属ダイカルコゲナイド半導体の一種である「セレン化タングステン(WSe2)」に、広帯域テラヘルツパルスを照射したところ、コヒーレントな振動が励起されることを発見した。
横浜国立大学の草場哲助教や武田淳教授、カリフォルニア工科大学のHaw-Wei Lin氏やGeoff Blake教授らによる研究グループは2024年4月、遷移金属ダイカルコゲナイド半導体の一種である「セレン化タングステン(WSe2)」に、広帯域テラヘルツパルスを照射したところ、コヒーレントな振動が励起されることを発見したと発表した。
遷移金属ダイカルコゲナイドは層状物質の一種。組成や構造によってバンドギャップや伝導特性が大きく変わる。このため、次世代のエレクトロニクス材料やバレートロニクス*)材料として注目されている。
*)バレートロニクス:電子のバレー自由度を活用して情報処理を行うことを目的とした、新しい技術(出典:東北大学)
今回はこれら物質の高速応答性を確認するため、超短パルスレーザーを用いて発生させた広帯域テラヘルツパルスをWSe2に照射。これによって生じる偏光回転角を、検出用超短パルスレーザーを用い解析した。実験結果から、偏光回転角は時間とともに超高速で振動していることを見いだした。そして、この振動が和周波過程によって励起されたコヒーレント振動であることを示した。
今後は、遷移金属ダイカルコゲナイドをはじめさまざまな材料について、今回の研究成果を活用し超高速応答を明らかにしていく。さらに、今回明らかになった励起過程などを活用しながら、二次元物質の物性を制御する手法を確立していく考えである。
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