横浜国立大学と総合科学研究機構、物質・材料研究機構(NIMS)、住友金属鉱山らの研究グループは、リチウムイオン電池の正極材料に向けて、新しいニッケル系層状材料を開発した。高いエネルギー密度とコバルトフリーを実現できるという。
横浜国立大学の藪内直明教授と総合科学研究機構の石垣徹主任研究員、物質・材料研究機構(NIMS)、住友金属鉱山らによる研究グループは2024年2月、リチウムイオン電池の正極材料に向けて、新しいニッケル系層状材料 (Li0.975Ni1.025O2) を開発したと発表した。高いエネルギー密度とコバルトフリーを実現できるという。
電気自動車に向けたリチウムイオン電池は、コバルトを含むニッケル系層状酸化物を正極材料に用いることが多い。ところが、コバルトは偏在性が高い金属資源である。これを解決するため、コバルトフリーの材料開発が進められている。
研究グループは、コバルトが10〜20%程度含まれている従来のニッケル系層状材料を用い、コバルトが果たす役割などを詳細に調べた。この結果、コバルトを含まない材料は、充電状態にニッケルイオンが移動し、これが劣化の要因になることを明らかにした。さらに、構造欠陥(層状材料においてイオンが入れ替わったアンチサイト欠陥)を有するモデル材料を合成し、これらの材料は充電状態におけるニッケルイオンの移動を抑制できることが分かった。
こうした知見を基に、従来の合成手法を用いて、2〜3%の極少量のニッケルイオンを過剰な組成とした材料「Li0.975Ni1.025O2」を合成した。構造欠陥を有するこの材料が、充電中のニッケルイオンの移動を抑制できることを実験により確認した。優れた急速充電特性と出力特性を備えていることも分かった。
研究グループは、今回のコバルトフリーに加え、ニッケルフリー構成を実現する電池材料の開発にも取り組んでいる。
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