物質・材料研究機構(NIMS)の研究グループは、ネオジム鉄化合物よりも高い磁気物性値を示すSmFe系新規磁石化合物「SmFe8.8N1.1」の合成に成功した。
物質・材料研究機構(NIMS)磁性・スピントロニクス材料研究センターのA.R.Dilipan NIMSジュニア研究員や高橋有紀子グループリーダーらによる研究グループは2024年5月、ネオジム鉄化合物よりも高い磁気物性値を示すSmFe(サマリウム鉄)系新規磁石化合物「SmFe8.8N1.1」の合成に成功したと発表した。
電動車で用いられる駆動モーターの多くに、強い磁力を発生するネオジム磁石が用いられている。ただ、ネオジム磁石は高温での特性が悪いため、ジスプロシウムなど重希土類元素を添加することで熱減磁を補ってきた。ところが、これらの材料は調達面でのリスクもあるため、こうした元素を含まない永久磁石材料の開発が求められているという。
そこで研究グループは、TbCu7型構造のSmFe7(1-7系)化合物に注目した。SmFe5化合物のSmサイトを、Feのダンベルで不規則に置換した構造となっている。Fe濃度を最高SmFe10まで置換することが可能なため、高い磁化が期待できるという。ただ、安定相で異方性磁界が極めて大きいTh2Zn17型Sm2Fe17(2-17系)化合物が近くに存在するため、1-7系はこれまで注目されてこなかった。
研究グループは、単相合成に有利なスパッタ法を用い、Fe濃度を高めたTbCu7系SmFe8.8N1.1化合物の単結晶薄膜を合成することに成功した。合成した化合物の磁気物性値を測定したところ、高温でNd2Fe14Bを凌ぐ磁気特性が得られ、室温で極めて高い異方性磁界(約22テスラ)や、より高い飽和磁化(1.64テスラ)、高いキュリー点(770K)を持つことが分かった。
研究グループは今後、実用的な磁石の実現に向けて、「保磁力を得るための微細組織エンジニアリング」や、「SmFe8.8N1.1を粉で大量に作る方法」「その粉を磁石の形に固めていくプロセス」などを開発していく計画である。
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