Intelは2024年5月、ファウンドリー事業部門であるIntel Foundry Services(IFS)でシニアプレジデント兼ゼネラルマネジャーを務めるStuart Pann氏の退任を発表した。就任から1年あまりでのことだった。これを受け、Intelのファウンドリー事業の存続可能性について、再び疑問が提起されることになった。
Intelは2024年5月13日(米国時間)、ファウンドリー事業を統括するStuart Pann氏の退任を発表した。就任から1年あまりでのことだった。これを受け、Intelのファウンドリー事業の将来的な存続可能性について、改めて疑問が提起されることになった。
Pann氏は、1981年のPC革命全盛期にIntelに入社したベテランだ。他社でのキャリアを経て2021年にIntelに戻り、2023年3月、Intel Foundry Services(IFS)の初代プレジデントを務めたRandhir Thakur氏の後任となった。なお、Thakur氏はこの後に、インドのコングロマリットTata Groupのエレクトロニクス製造部門である、Tata ElectronicsのCEO(最高経営責任者)兼マネージングディレクターに就任している。
今回、Pann氏は就任から1年あまりでの退任となったが、これはまるで1年前の交代劇のデジャヴのようだ。Intel Foundryの2024年第1四半期における売上高は44億米ドルで、前年同四半期比で4億6200万米ドルの減少となった。その主な要因は、バックエンドサービスと製品サンプルの売上高が減少したことにある。
Intelは2024年2月、TSMCやSamsung Electronicsに対抗する独立した事業体である「Intel Foundry」の正式な始動を発表したが、Pann氏はそれからわずか数カ月での退任となる。同氏はIntelのIDM 2.0アクセラレーションオフィス(IAO)を設立し、社内ファウンドリーモデルの実装を支援した。IAOは、Intelの事業部門と密接に連携し、同社の社内ファウンドリーモデルをサポートするものだ。
Intel Foundryは、既存のファウンドリーの枠を超え、世界初となるオープンシステムファウンドリーとしての地位を確立することを目指しているが、現在、重大な技術的/商業的課題に直面している。それは、ウエハー製造や最先端プロセス/パッケージング技術、チップレット規格、ソフトウェア、組み立て/テスト機能を、統一された半導体エコシステムに組み合わせることなどだ。
後任のKevin O'Buckley氏は、これらの課題を引き継ぐことになる。同氏は、Marvell Technology(以下、Marvell)のカスタム/コンピュート/ストレージグループ部門担当シニアバイスプレジデントとして、同社のカスタムチップ事業を率いてきた人物だ。同氏は2019年、MarvellのAvera Semiconductor(以下、Avera)買収に伴いMarvellに入社した。Averaは、IBMをルーツとする従業員1000人規模の半導体設計メーカーで、Mavellに買収される前は、GlobalFoundriesに買収されている。O'Buckley氏は、AveraのGlobalFoundriesからの売却を指揮したという。
IntelのCEO(最高経営責任者)であるPat Gelsinger氏は、Intelの復活をファウンドリー事業の立ち上げに賭けているが、それを加速させるには大規模な先行投資が必要なため、黒字化の実現には程遠い状況にあることを認めている。しかし時間の猶予はなく、O'Buckley氏は迅速な改善計画を求められることになる。
社員の勤続年数が長いことで知られるIntelで、社外出身のO'Buckley氏のカスタムチップ事業に関する専門知識は資産となるだろう。同氏はIBMに在籍中、22nm/14nmのFinFET技術開発の陣頭指揮を執った。Gelsinger氏はO'Buckley氏について「ファウンドリー企業とファブレス企業の両方における専門知識を独自にブレンドしている」と評している。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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