米国は、欧州の協業的なアプローチとは対照的に、保護貿易主義を選択した。バイデン政権は最近、米国メーカーを競争から守るために、中国製EVに100%の関税を課すことを発表した。こうした動きは、短期的には国内メーカーに利益をもたらすかもしれないが、長期的にはイノベーションや消費者の選択肢を妨げる可能性がある。
バイデン政権の決断は、中国EVメーカーがメキシコに工場を建設し、米国のユーザー向けにEVを輸出しようとしている状況に直接対応するものではない。これらの自動車は理論上、低関税の恩恵を享受することができる。それでも米国政府は、中国製EVが米国のショールームに並ぶのを全て阻止するだろう。
米国の関税措置の効果については、まだ確定していない。アナリストの予測によると、関税が50%を超えた場合のみ、中国自動車メーカーの欧州進出計画に大きな影響を及ぼすことになるという。また、中国製EVの欧州における高い利益性が、関税負担を相殺する可能性がある。さらに、このような高い関税によって米中間の貿易関係がさらに緊張し、報復措置へとつながる恐れもある。
中国のコンサルティング会社Trivium Chinaのアソシエートディレクターを務めるCory Combs氏は、「米国の自動車メーカーは、新たな関税措置により、中国の低価格競争から守られることになる。その一方で、米国の消費者たちは、世界最高品質の最も安価なEVを入手できなくなるのだ」と述べる。
世界EV市場では今後、競争と協業によるダイナミックな相互作用が生じるだろう。欧州の自動車メーカーが中国メーカーとの協業に積極的なのは、急激に進化する市場に対する実践的なアプローチを反映している。米国の関税措置は、短期的には国内メーカーを保護するかもしれないが、長期的にはイノベーションを低迷させ、消費者の選択肢を減らす可能性がある。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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