安価なEV(電気自動車)を発売する中国メーカーとの競争において、欧米は真逆のアプローチをとっている。自らの“生き残り戦略”として中国勢との共存を図る欧州に対し、米国は関税を100%に引き上げるなど強硬路線をとる。
電気自動車(EV)市場は現在、劇的な変化を遂げており、中国メーカーが強い勢力として台頭している。このような変化は特に欧州において顕著で、実績ある自動車メーカーが中国のEVメーカーとの間で協業関係を構築している。一方で米国は、新たな関税措置を講じることで保護貿易主義の立場を取っている。
エレクトロニクス業界は、EV分野での優位性をめぐる競争において、大きな利害関係を有している。EVは、数多くのエレクトロニクス製品を搭載するため、半導体メーカーやさまざまな部品/技術メーカーが恩恵を享受している。トラクションインバータ市場だけでも、2025年に450億米ドル規模に達すると予測される。しかし、EV市場で競争を繰り広げている国々は、このようなEVに国産のエレクトロニクス製品を数多く搭載したいと考えている。中国は、世界半導体/電池分野に狙いを定め、低コスト面でリーダー的地位を維持している。
BYDやLeapmotorなどの中国メーカーは、市場に競争力をもたらしている。BYDは最近、販売価格が1万米ドルを切る小型EV「Seagull」を発表した。世界各国で販売されている大半のEVよりもはるかに安価だ。
中国のEVメーカーLeapmotorは、PeugeotやFiat、Alfa Romeoなどのブランドを有する欧州大手のStellantisとの提携を発表した。Leapmotorはこの協業により、欧州全体に広がるStellantisの大規模な販売代理店ネットワークや製造施設を活用し、欧州市場への参入を加速させていく。
欧州の自動車メーカーは、中国の競合メーカーに市場シェアを奪われるという可能性に直面し、実践的なアプローチを採用している。StellantisとLeapmotorのパートナー提携は、こうした変化を示す好例だといえる。Stellantisは、価格競争力のある中国製EVを自社の販売代理店で提供することにより、さもなければ失ってしまうかもしれない市場セグメントを獲得していきたい考えだ。この戦略は、「欧州メーカーは、中国のライバル企業と効率的に競争するために適応しなければならない」という認識の高まりを反映している。
スペインでは、中国安徽省蕪湖市(Wuhu)に拠点を置くCheryが、カタルーニャ州の旧日産工場において、「Ebro-EV Motors」というブランドのEVピックアップトラックを生産する予定だという。Cheryは、欧州ではこれまでほとんど知られていなかったメーカーだ。
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