半導体製造の前工程において、日本の半導体製造装置メーカーのシェア低下が止まらない。代わって躍進しているのが中国メーカーである。今回は、半導体製造装置のシェアの推移を分析し、中国勢が成長する背景を探る。
世界半導体市場は、コロナ特需により、2022年に過去最高の5740億米ドルとなった。しかし2023年は特需が終息して不況となり、約8%減少して5269億米ドルに落ち込んだ。そして、ことし(2024年)は不況から回復して、コロナ特需のピークを超える6112億米ドルになると予測されている。
一方、装置市場は2022年に、半導体市場と同様に、コロナ特需によって過去最高の1076億米ドルを記録した。ところが、半導体市場が大きく落ち込んだ2023年に、装置市場は1063億米ドルと、わずか13億米ドル(2%)の低下にとどまっている。つまり、2023年において、半導体と装置市場の挙動には大きな乖離があると言える(図1)。
では、なぜ、このような乖離が生じたのだろうか? 本稿では、この乖離が、米国による輸出規制を受けている中国が露光装置を爆買いしたことに起因していることを論じる。次に、主な前工程装置メーカーの出荷額推移を分析し、NAURAおよびAMECなど中国メーカーが躍進していることを説明する。そして最後に、日本の前工程装置シェアの低下が止まらず、2023年は、米国、欧州に次ぐ3位に転落した実態を明らかにする。
日本の半導体政策は、RapidusやTSMC熊本工場など、およそ実現性が乏しい方向に向かっており、装置メーカーの競争力向上に対して何らかのテコ入れをする気配がない。従って、前工程装置のシェア低下という危機への対処は、装置メーカー各社の自助努力に期待するしかない。前工程装置産業が、日本の半導体デバイス産業の二の舞にならないことを願うのみである。
2023年における世界半導体と装置市場の乖離の原因は、地域別の装置市場を見ると、その謎が解けてくる(図2)。2022年から2023年にかけては、台湾と韓国が大きく減少する一方、中国と米国が大きく成長している。また、日本と欧州は、ほぼ横ばいに見える。
ここで、各国・地域の2022年と2023年の装置市場および、2022年から2023年にかけての増減を表にまとめてみた(図3)。その結果、2023年にかけて、中国が83.3億米ドル、米国が15.7億米ドル、欧州が1.8億米ドル増大しているのに対して、韓国が15.6億米ドル、台湾が68.8億米ドル、日本が4.2億米ドル、その他地域が23億米ドル減少していることが分かった。これらを合計すると、世界全体で、2022年から2023年にかけて13.9億米ドルの減少となるわけである。
つまり、一見してほぼ横ばいの世界の装置市場の増減は、各国・地域によって大きくばらついていると言える。その中で、特に、世界最大規模となった中国装置市場の成長が著しい。では、なぜ、不況となった2023年に、中国装置市場がこれほど増大したのだろうか?
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.