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半導体製造装置でも躍進する中国 日本はシェア低下を止められるのか湯之上隆のナノフォーカス(74)(2/5 ページ)

» 2024年07月10日 11時30分 公開

各種の前工程装置の出荷額で露光装置が急拡大

 図4に、各種の前工程装置の出荷額推移を示す。なおここで、検査装置は外観検査とパタン検査の合計、洗浄装置はバッチ式と枚葉式の合計をグラフにプロットしている。

図4 各種前工程製造装置の出荷額の推移(〜2023年)[クリックで拡大] 出所:モルガンスタンレー証券のデータおよび筆者の調査を基に作成

 さて、あらためて図4を見ると、コロナ特需が崩壊した2023年に、ドライエッチング装置、検査装置、CVD装置など、多くの装置市場が減少している。ところが、露光装置市場が急拡大し、それまで1位だったドライエッチング装置市場を抜いて、246億米ドルの最大規模に成長した。また、露光装置ほどではないが、PVD装置も成長している(この原因については後述する)。

 ここで、半導体不況となった2023年に、中国の装置市場が大きく成長しており、また露光装置市場が急拡大している。この2つの事柄は関連していると考えられる。その理由は以下の通りである。

 2022年10月7日に、米国が中国に対して、先端半導体を製造することができる装置の輸出規制を課した。そして、日本とオランダも、米国の規制に足並みをそろえることになり、日本は2023年7月から、オランダは同年9月から、ArF液浸などの装置の輸出を停止することになった(拙著『ここが変だよ 日本の半導体製造装置23品目輸出規制』、2023年4月25日)。

 そのため、中国(の特にSMIC)は、日本とオランダの輸出規制が発動する前に、駆け込みで(経済原理は無視して)、大量にArF液浸を発注したと考えられる。そのことが、2023年に中国装置市場が急拡大し、露光装置市場が急成長する要因になったのだろう。

 それは、前工程装置メーカーの出荷額の推移においても同じ現象を見て取ることができる。

前工程装置メーカーの出荷額でトップに躍り出たASML

 図5に、主な前工程装置メーカーの出荷額の推移を示す。2022年から2023年にかけて、米Applied Materials(AMAT)は微増、Lam Research(Lam)、東京エレクトロン(TEL)、KLAが下落する中で、露光装置を主力ビジネスとしている欧州ASMLが急成長し、AMATを抜いてトップに躍り出た。

図5 主な前工程装置メーカーの出荷額の推移[クリックで拡大] 出所:モルガンスタンレー証券のデータおよび筆者の調査を基に作成

 この背景事情には、図4と同様に、中国からのArF液浸の大量発注があると考えられる。それは、ASMLの露光装置別の出荷台数の推移からも明らかである(図6)。ASMLは、毎年80台前後のArF液浸を出荷していた。ところが、2023年には約1.5倍の125台のArF液浸を出荷したからだ。そして、この増加分のほとんどが、中国に輸出されたと思われる。

図6 ASMLの露光装置別の出荷台数[クリックで拡大] 出所:ASMLの決算発表のデータを基に筆者作成

 ここまでを簡単にまとめると、半導体不況となった2023年に世界の装置市場がほぼ横ばいだったのは、米国に足並みをそろえたオランダのASMLが輸出規制を発動するまでに、中国がArF液浸を大量発注したからだと推測できる。その結果、中国装置市場が急成長し、露光装置市場も急拡大、装置メーカーの出荷額でASMLが1位に躍進した。

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