Graphcoreは、これまで3世代のIPU(Intelligence Processing Unit)チップを開発してきた。2022年に発売した最新の第3世代チップは、TSMCと連携して開発した3D Wafer on Wafer技術を適用して構築した初のプロセッサだ。2020年に発売した第2世代IPUと同じマイクロアーキテクチャで、40%の性能向上を達成した。
Graphcoreは、既存のIPU顧客のサポートを継続するという。Toon氏は、「当社はすでにソフトバンクGと新製品の開発を進めており、詳細は"近日中"に発表する」と述べている。
同氏は、「当社は、かなり前から次世代製品の開発に取り組んでいる。次世代製品は当社がこれまでに開発したものがベースとなるが、製品の規模と完成度の点ではるかに進歩したものになる見込みだ。そしてもちろん、それを支えるためにはるかに多くの資本を利用できるようになる」と述べている。
ソフトバンクGの会長兼CEOである孫正義氏は2024年6月の年次総会で、同社の将来に向けたビジョンを発表し、その中で、自身のライフワークはASI(人工超知能)を実現することだとはっきりと自覚したと語っていた。孫氏は、ASIを人間の1万倍の知能を持つシステムと定義し、AGI(汎用人工知能)を搭載したロボットのネットワークになり得ると明言した。しかし、ソフトバンクGがこれをどのように実現するかについての詳細は明らかにしなかった。
同氏はその際、米国のロボット工学大手のBoston Dynamicsと英国の自動運転のスタートアップ企業であるWayve、英国の半導体IP(Intellectual Property)大手のArmなど、ソフトバンクGのポートフォリオ企業をソリューションの一部として紹介した。買収が完了した今、Graphcoreがこの計画の一端を担うことは明らかだ。
また、Graphcoreは、最大500兆パラメータのモデルのサポートに向け、8192個のチップで10EFLOPS(エクサフロップス)を実現する商用AIスーパーコンピュータ「Good Computer」を発表した。発表の際、Graphcoreはこのシステムを「超知能」、つまり「人間の脳の能力を超えられるシステム」と表現していた。Toon氏は、「このアイデアはソフトバンクGのASIビジョンに合致しているため、このコンセプトは今後も継続される」と述べている。
同氏は、「今回の提携が素晴らしい理由の1つに、当社が掲げる野心とソフトバンクGの野心がぴったりと一致していることがある。当社は、非常に壮大なビジョンの実現の一端を担っている。それがどのようなもので、どのように実現されるかは、今後時間をかけて明らかになるだろう」と述べている。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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