The State of AI Maturityでは、対象8カ国/地域を組織、社会経済、政府政策の3つの側面から分析し、AIの活用状況を成熟度が低い順にステージ1〜4まで4つの成長段階に分類した。なお、同調査によると、アジア太平洋地域におけるAI利用は、多様な文化や言語体系、規制環境の影響により、米州やEMEA(Europe,the Middle East and Africa)と比較して遅れているという。
対象8カ国/地域の中で、成熟度が最も高いステージ4「AIリーダー」はシンガポールのみだった。AIリーダーでは、AI活用を前提にデータを準備する文化に加え、AIの拡張によって短期/長期目標の達成を目指す能力が認められる。
インフラが整備され、データ管理戦略に基づいた行動が認められるステージ3「AIイノベーター」には、日本、韓国、オーストラリアが分類された。
日本は、組織/社会経済/政府政策の全てでアジア太平洋地域の平均を上回った。組織的な側面では、製造業/非製造業を問わずAI活用や投資が行われている点に強みがある。一方で課題としては、日本語モデル志向かつレガシーなシステムの温存によるAIの適用遅延や、カスタム開発志向によるAI実装の複雑化などが挙げられている。
社会経済的な側面では、8カ国/地域の中で最高点だった。国/地域内で最もAIソフトウェアプラットフォームに投資をしている他、AIの社会実装に向け政府主導で取り組んでいることが評価された。課題としては、AI人材やスタートアップの不足が挙げられる。政治政策の側面では、日本政府は2023年の補正予算で半導体や生成AIの支援に2兆円を計上していることや、安全で倫理的なAI利用に向けた取り組みを開始していることが強みとして挙げられた。一方で、AIに特化した規制がなく、個々の企業努力に委ねられているのが課題だ。
その他、短期的な目標達成のためにAIの活用を図るステージ2「AI実践者」にインド、台湾が、AIの活用機会や投資の検討を行うステージ1「AI探索者」にインドネシア、マレーシアが分類されている。
大野氏は調査結果について、「おおむね想定通りだ。しかし、日本がシンガポールに後れを取っているという結果は想定外だった」とコメント。寄藤氏は、大野氏のコメントを受けて「シンガポールは、英語ベースでの新技術を活用している点や、日本よりもレガシーなシステムが少ないことが発展の理由として挙げられる」と説明した。
大野氏は、The State of AI Maturityを実施した背景について「今後も成長が見込まれるAI分野について、市場動向を把握し、課題認識を擦り合わせる目的で実施した。また、調査結果を広く共有することで、パートナーと共同でビジネス機会を創出するきっかけになると期待している」と語った。
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