フランスUnaBizは2024年7月17日(現地時間)、位置情報サービス「Sigfox Atlas Sparks Betaの提供を開始した。前日には、都内でメディアブリーフィングを開催し、Sigfoxの事業や普及状況などを説明した。
LPWA(Low Power Wide Area)ネットワークの一つであるSigfoxを手掛けるフランスUnaBizは2024年7月17日(現地時間)、位置情報サービス「Sigfox Atlas Sparks Beta(以下、Atlas Sparks)」の提供を開始したと発表した。同サービスの活用により、大規模資産管理の総所有コスト(TCO)を全体で20〜30%削減できる見込みだ。同社は、発表に先立って都内で記者説明会を開いた。
Sigfoxは、低消費電力で長距離伝送を強みとするIoT(モノのインターネット)ネットワークだ。世界70カ国/地域以上をカバーしていて、接続デバイスは1300万台。アクティブ基地局は3万594で、月間メッセージ数は27億に及ぶ。
Atlas Sparksは、Sigfoxの位置情報サービス機能を、特許取得済みのML(機械学習)アルゴリズムで強化したジオロケーションサービスだ。使用しているトラッカーのうち20%をWi-Fi対応トラッカーにアップグレードすれば、残りの80%が位置情報機能を内蔵していない安価なSigfox対応トラッカーだとしても、全てのトラッカーで正確な位置特定が可能になる。UnaBiz CTO(最高技術責任者)を務めるAlexis Susset氏によると、「トラッカー全体の20%で“賢いデバイス”を活用するだけで、残り80%のデバイスも賢くすることができるというイメージだ」という。
物流/サプライチェーン分野では、膨大な数の資産を管理/追跡することが難しく、コスト面でも課題がある。低コストのトラッカーは存在するものの、位置情報の精度が不十分であることが多く、コストと精度のバランスが難しかった。
Atlas Sparksでは、スマートWi-Fiトラッカーおよび低コストトラッカーからのデータがクラウドに集約され、MLアルゴリズムがそれぞれの通信パターンを比較/クラスタリングする。これにより、シンプルな低コストトラッカーでも、Wi-Fiを使用しているかのように正確な位置を特定できる。測定精度は誤差50〜300mで、スマートWi-Fiトラッカー/低コストトラッカー合わせて1万台以上のデバイスを使用する場合に活用できる。なお、MLの学習フェーズは6カ月が最適(最低2カ月)だという。
欧州企業と行った実証実験では、複数カ国に跨る120万台のデバイスを接続し、6カ月間データを取得した。結果、位置情報を90%の成功率で取得できたという。日本では、京セラコミュニケーションシステムが開発した、輸送中の製品の位置と開封状況を検知できる再利用可能なカード型デバイス「SeeGALE Card」でもAtlas Sparksを利用できる。
Susset氏は「Atlas Sparksの検出精度は、対象物がどの倉庫にあるのかを特定できるレベルのものだ。物流企業が求める測定精度およびコストのバランスが取れたサービスとして、顧客からの関心も高い」とコメントした。
UnaBizは、Sigfox事業の注力市場としてスマート水道メーターや物流/サプライチェーン、施設/ビル管理を挙げた。その他、セキュリティ用途での活用も進んでいるという。UnaBiz Japan 日本法人取締役 ジャパン・ソリューション・ディレクターの水谷章成氏は、「一般的なセキュリティアラームシステムで使用されているGSMネットワークは、Amazonで販売しているジャマ―(通信妨害装置)で簡単に通信を妨害されてしまう。しかし、Sigfoxを採用した装置では高いジャミング耐性を持つため、欧州の専門的なセキュリティソリューションプロバーダーであるVerisureなどでも採用されている」と語った。
また、UnaBizは、Sigfoxの拡販に向けて、STMicroelectronicsやSEMTECH、Holtek Semiconductorなどのチップメーカーと共同してデバイスの開発を行っている他、クラウドベンダーと共同でクラウドサービスを拡張するなど、パートナーシップを強化しているという。
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