物質・材料研究機構(NIMS)は、機械学習手法を適用して、高エネルギー密度金属リチウム電池の寿命予測モデルをソフトバンクと共同開発した。充放電データから抽出した特徴量の組み合わせを最適化したところ、予測精度を示す決定係数が0.89と高いモデルを構築することに成功した。
物質・材料研究機構(NIMS)は2024年7月、機械学習手法を適用して、高エネルギー密度金属リチウム電池の寿命予測モデルをソフトバンクと共同開発したと発表した。充放電データから抽出した特徴量の組み合わせを最適化したところ、予測精度を示す決定係数(R2)が0.89と高いモデルを構築することに成功した。
金属リチウム電池は、現行のリチウムイオン電池に比べ高い重量エネルギー密度を実現できることから、ドローンやEV(電気自動車)、家庭用蓄電システムといった用途で注目されている。NIMSはソフトバンクと共同で「NIMS-SoftBank先端技術開発センター」を2018年に設立し、高エネルギー密度蓄電池の研究を行ってきた。
そして、300Wh/kg以上の高エネルギー密度で、200サイクル以上の充放電が可能な金属リチウム電池を開発してきた。ただ、金属リチウム電池の劣化機構などについて、十分に解明はされてはいなかったという。
研究チームは今回、金属リチウム負極とニッケル過剰系正極「NMC811」を用い、単層セルのサイズが4×3cmという高エネルギー密度の金属リチウム電池を50セル以上も作製し、その充放電性能を評価した。実験により得られた充放電データに対し、機械学習法を適用して35種類の特徴量を抽出し、金属リチウム電池の寿命を予測するモデルを構築した。取得した特徴量は大きく「放電プロセス」「充電プロセス」および、「緩和プロセス」と3つに分類できるという。
それぞれの特徴量を用いて予測モデルを構築し、その予測精度を比較した。この結果、放電プロセスに関連する特徴量で構築した予測モデルが、R2=0.67と最も大きく、効果的であることが分かった。
研究チームは、予測精度を高めるため、特徴量の組み合わせについても検討した。そうしたところ、放電関連で9個、緩和関連で3個の特徴量がサイクル寿命と高い相関を持つことが確認された。そこで、これら12個の特徴量を組み合わせた4095通りモデルについて、予測精度を評価した。
この結果、放電関連の5個と緩和関連の1個、合計6個の特徴量を用い、R2が0.89という極めて高い予測精度のモデルを構築することに成功した。
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