昨今の業界は大きく変化している。半導体製品と設備機器製品のライフサイクルのギャップがさらに大きくなってきている点だ。そのため、同じ半導体製品を長期間にわたって継続的に使用するには、製造から何年も経過した半導体製品を購入して使わざるを得ない状況が増加していることは間違いない。この際の製造日を確認する方法として、半導体製品に記されている「デートコード」が広く利用されている。
デートコードは、1960年代に半導体製品に導入された。目的は、製造日や工程、部品表に基づいた製品履歴と、2〜3年の“販売期限”を維持するためだといわれている。そのため、現在に至るまで記載されたデートコードから2〜3年以上過ぎた半導体製品は使用できなくなると考えられている。また、半導体製品を発注する際に、デートコードが1年以内の製品に限定されていることも多く、より新しい製品を使うための判断材料として使われることが多い。
製品の管理という点では、デートコードを参照する形で、PCN(Product Change Notification)等のアナウンスがされている。アプリケーションによっては、製品のバージョンなどの制限があり、使用する半導体製品のデートコードを指定する場合もある。その他、何らかの問題が発生した際に、履歴を追うための情報としてデートコードは使われている。
デートコードを巡る議論として「半導体製品を使用した製品は、実質最大で30年以上使っても問題ないが、使う前の半導体製品は1〜2年以内に製造された製品以外はダメなのか」というものがある。
これに対して、半導体製造メーカーと正規代理店(Texas Instruments、Analog Devices、旧Freescale Semiconductorを含む)で構成される全米電子流通協会(ECIA)のタスクフォースは、2002年頃から「デートコードは、もはや製品の品質を示す指標ではない。デートコードが古いからと言って故障するわけではないし、製品の仕様や性能に何ら違いはない。デートコードの新しい製品だけを指定して購入するのは避けてほしい」との見解を出している。
ECIAは2023年6月、この方針を更新する形で「一般的には、デートコードを指定するのは推奨しない。しかし、バージョンの違いで問題が発生する可能性がある場合や、オリジナル半導体メーカーの製造時に、何らかの原因により特定のデートコードの製品に問題があることが判明した場合など、製品の新しい/古いではなく、製造期間を特定したい特定の要件がある場合はこの限りではない」と新たな文書を発表している。
さらには、品質的にも信頼性的にもより厳しいとされる軍用規格でさえ、デートコードで製品を制限するのではなく、製品そのものの品質に注意してほしいと規定されている。実際、アメリカでは、軍用規格の半導体製品については、古いデートコードの製品でも問題なく購入されているし、そこで問題が発生したということも聞いていない。
半導体メーカーでは、デートコードに関する方針として、「X社の方針は、最大5年前までのデートコードの製品を出荷することだ。メッキとストレージの技術的進歩により、はんだ付け性の問題が解決され、新しい材料に対するデートコードの要求は時代遅れになった。より新しいデートコードの要求は、サプライチェーンにおいてコスト増となるが、この追加コストには何のメリットもない。X社が5年前の日付コードまで出荷するという決定を下したことは、それよりも古い製品が規格外であることを意味するものではなく、単に合理的なカットオフ・ポイントとして、5年としただけだ」(筆者日本語訳)と表明している。つまり、このデートコードについては、長期間保管した半導体製品において、懸念事項として重要視する必要はないと考えられる。
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