コロナ禍を経て、半導体製品の安定確保がより重視されるようになっている。そうした中、同じ半導体製品を使い続けるためには、自社での保管を含め、在庫を長期間保管しなければならない状況が発生する。今回は半導体製品の長期保管に焦点を当て、その懸念点について前後編の2回で検証する。
半導体を使用した機械や設備などの製品ライフサイクルは総じて長く、10年以上といわれている。しかし、日本機械工業連合会や経済産業省の調査結果では、実際のユーザーの使用期間は、10年から20年、長いものでは30年以上に及ぶことが分かった。また、製品ライフサイクルが短いとされている家庭用エアコンなどの民生機器においても使用期間は10年程だ。
「半導体製品のライフサイクルに関する考察(7)」で述べたように、これほどの長い期間、同じ半導体製品を使い続けるためには、さまざまな工夫がされている。しかし、数十年間使い続ける間に半導体製品の生産が中止となる場合が少なくない。加えて、2020年頃から発生した半導体製品の供給不足や生産中止製品の増加などもあり、半導体製品の安定確保がより困難になっている。
こうした中で、半導体製品を確保し続けるためには、自社での保管を含め、半導体製品の在庫を長期間保管しなければならない状況が発生する。仮に、使用する半導体製品のライフサイクルが5年とした場合、それ以降は最長で25年間、半導体製品の在庫を保管しなければならない。
今回は半導体製品の長期保管に焦点を当て、その懸念点について2回にわたり検証する。
長期保管について説明をする際、半導体製品の保管条件についての質問を多く受けるが、「各半導体メーカーの指定する保存条件で保存してください」と回答している。これは、各半導体メーカーが指定した保存条件を満たすための条件をどう設定するかは、保管する側の設備や環境に大きく影響されるためだ。
半導体製品のデータシートには「ABSOLUTE MAXIMUM RATINGS(絶対最大定格)」という項目の中に「Storage Temperature(保管温度)」という項目がある。半導体製品によってその仕様は違うが、一例を示すと、「−55 to 150℃」となっていた。前提として、この仕様はあくまでも一時的なもので、長期間続けることを想定していない。つまり、長期保管の条件ではないということを意味する。
では、どのような仕様が保管条件として示されているのだろうか。以下の表は、ある半導体について、ランダムに選んだ複数の半導体メーカーのWebサイトやアプリケーションノートなどに記載されている保管条件をまとめたものだ。
メーカー | 仕様の一例 |
---|---|
A社 | 温度:30℃以下、湿度:80%下 |
B社 | 温度:5〜35℃、湿度:45〜75% |
C社 | 温度:30℃、湿度:70%RH(相対湿度)以下 |
D社 | 温度:5〜35℃、湿度:40〜75% |
E社 | 温度:5〜40℃、湿度:45〜90% |
これを見ると、各社の条件はほぼ同等であることが分かる。これは、JEDECの規格に準拠しているためだと推測できる。以下、半導体の保管に関連する規格を一部紹介する。
この中に、「メーカーが別途許可しない限り、環境条件は30℃(86゜F)以下、湿度60%RH以下に維持すること」(筆者日本語訳)という記述がある。各半導体メーカーは、この条件を基に保管条件を決めていると考えられる。
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