シャープは、開発中のにおいセンサー「AI Olfactory Sensor」を展示した。
AI Olfactory Sensorは、非対称の交流電界を印加し、イオン化したにおい分子の移動速度の差から成分を解析する。一般的にはFA-IMS(Field Asymmetric-wave Ion Mobility Spectrometer)と呼ばれる手法だ。まずは、におい分子を含む空気をポンプで引き込み、プラズマ放電技術でにおい分子をイオン化する。次に、フィルター電極に2種類の電圧をかけることでにおい分子のフィルタリングを行う。さらに、フィルターを通過したイオンの軌道を偏向電極の電界で曲げてディテクタ電極に落とし、電流として検出する。検出した電流値をグラフとして可視化し、独自開発したAI(人工知能)に学習させることで、においの判別を可能にする。
においセンサー技術では他にも、におい分子を膜に吸着させて計測する方式がある。その場合、吸着した分子を脱離させるために何度も熱を加える必要があることに加え、使用を続けると脱離しにくくなるため、センサーの性能が劣化するという課題がある。一方で、FA-IMS方式では、におい分子がフィルター電極や検出部に吸着することはないため、繰り返し使用できる。
担当者は、AI Olfactory Sensorについて「同技術では、FA-IMSの素子をガラスのセルで構築している。これは、長年培った液晶ディスプレイの量産技術を応用して実現できた」と説明した。現在は、試作機でにおいサンプルの計測/学習を進めている段階だ。今後は、実用化に向けて筐体の小型化や効率的なサンプリング手法を模索していくという。
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