onsemiは2024年8月27日、同社のプライベートイベント「JASS」で、同年7月に買収したSWIR Vision Systemsの技術を活用したデモを同社として「世界で初めて」展示した。既に引き合いが多く、今後増産も検討するという。
onsemiは2024年8月27日、都内で開催した同社のプライベートイベント「JASS(Japan Annual Sensing Summit)」で、同年7月に買収したSWIR Vision SystemsのSWIR(短波長赤外線)技術を活用したデモを同社として初めて展示した。
デモでは、SWIR Vision SystemsのSWIRカメラを使用することで、シリコンウエハー裏面の配線やミントタブレットのケースの中身を非破壊で見られる様子を示した。担当者によると「照射する短波長赤外線の設定を変えることで、多層構造物体のどこを透過させるかを調整できる。ただし、液体は照射光を吸収してしまうため、黒く映ってしまう。今後、対応できる対象については調査を進める」と述べた。
その他の特長として「通常、SWIR技術を使った他社製品は、米国の輸出管理規制上、武器品目として扱われるため『ITAR(国際武器取引規則)』の対象になり、厳しい規制がかかる。しかし、当社のSWIR技術は軍民両用として扱われるため、『EAR(輸出管理規則)99』の対象になり、他社製品に比べて輸出のハードルが低い」(同担当者)と説明した。
SWIR Vision Systemsは、CQD(コロイド量子ドット)ベースの短波長赤外線に関する特許技術を保有する2018年創業のスタートアップだ。
従来のSWIR技術は、インジウム・ガリウム・ヒ素(InGaAs)プロセスが高コストで製造も複雑であったため採用が限定的だった。しかし、同社は、波長の長い光を吸収するように精密に調整できる光学的/電子的特性を持つナノ粒子または結晶を使用したCQDをベースとしたセンサー技術を開発することで、製造規模とコストの課題を改善した。
onsemiは、SWIR Vision Systemsの買収により、シリコンベースのCMOSイメージセンサーと製造ノウハウをCQD技術と組み合わせることで、高集積SWIRセンサーを低コストで大量に生産することや、高性能センシング製品のポートフォリオ拡充が可能になった。今後は、要望に合わせて、SWIR Vision Systems製のSWIRカメラに使われているセンサーやコア技術単体でも提供していく。主な用途は、産業機器や防衛、セキュリティ分野を想定している。担当者は、SWIR技術について「ニッチな技術のため、onsemiの既存製品と比較して市場規模は小さいが、需要が見込まれる重要な技術だ。今後、販売実績を積み上げて、シェアをしっかり取っていく」と語った。
さらに、「SWIR製品の引き合いは非常に多い。現在は、米国ノースカロライナ州ダーラムにあるSWIR Vision Systemsの既存工場で量産しているが、今後は需要に合わせて生産能力を拡大していく予定だ」と説明した。なおonsemiによれば、現時点でSWIR技術を展示会などに出展する予定はないという。サンプルや価格などについては要問い合わせとしている。
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