今回は、「後扉熱交換器(RDHX:Rear Door Heat Exchanger)」方式または「リアドア空調」方式と呼ばれる冷却方式を取り上げる。
サーバやデータセンターなどの放熱技術に注目が集まっている。演算処理を担うGPUとCPUの最大消費電力(熱設計電力(TDP))が増加しつつあることで、効率の高い放熱技術が強く求められるようになってきた。
そこで本コラムでは、サーバやデータセンターなどを支える最新の放熱技術を第468回から、シリーズで説明している。前々回は放熱能力への要求増加の背景を述べた。人工知能(AI)の急速な進化により、GPUとCPUの消費電力が急速に増大している。既存の強制空冷方式データセンターで古いサーバを新しいサーバに置き換えると消費電力が増加してしまう。何らかの工夫によってサーバルームの冷却能力を高めておく必要がある。
前回は、既存の強制空冷システムを残しつつ冷却能力を高める工夫として、小型の空調機「列内冷却器(In-row Cooler)」をサーバルーム内に追加する手法を紹介した。列内冷却器で冷やした空気と、床下からの低温空気の両方をサーバに送り込むことで、冷却能力を増強する。従来はラック当たりで最大10kW前後だった許容電力を、列内冷却器の導入によってラック当たりで最大30kWにまで高められる。
今回は、既存の強制空冷システムを残しつつ冷却能力をさらに高める工夫として、「後扉熱交換器(RDHX:Rear Door Heat Exchanger)」方式または「リアドア空調」方式と呼ばれる後扉付きの冷却器をラックの背面に取り付ける(あるいは配置する)手法を紹介する。
RDHX方式(リアドア空調方式)は文字通り、後扉が付属する熱交換器である。サーバ背面から放出される温風を熱交換器によって冷やし、後扉からサーバルームへと送り出す。熱交換には冷却液(通常は水)を使う。冷却能力はラック当たりで最大45kWにまで高められるとされる。
RDHX方式(リアドア空調方式)には送風用ファンを取り付けたタイプと、ファンを備えないタイプがある。送風用ファンの存在は冷却能力を高める一方で、冷却用消費電力の増加を招く。言い換えると、電力使用効率(PUE)が悪化する(PUEについては前々回を参照)。逆に送風用ファンがないと、サーバが内蔵するファンだけで空気の対流を生じさせることになり、冷却能力では劣る。
ただし、送風用ファンを備えた強力なRDHX方式(リアドア空調方式)だと、サーバルーム内のCRAC(Computer Room Air Conditioner)を省くことも可能だ。CRACを省ければ、PUEは大幅に向上する。
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