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熱いスマホを冷やす アクティブ冷却用半導体チップAI搭載で発熱量は増す一方(2/2 ページ)

» 2024年10月07日 15時30分 公開
[Gary HilsonEE Times]
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MEMSスピーカー向け技術を応用

手前が「XMC-2400 μCooling」チップ 手前が「XMC-2400 μCooling」チップ[クリックで拡大] 出所:xMEMS

 チップ冷却の原理は、既に市場に出回っている同社のMEMSスピーカーをベースとしている。Housholder氏は、「スピーカーは、超音波変換を利用し、可聴域の音を生成するために空気を動かす」と説明する。

 「xMEMSが空気流/冷却用の超音波トランスデューサーに取り組むきっかけとなったのが、オーディオ向けの超音波トランスデューサーである。コイルやマグネットシート、プラスチックダイヤフラムなどをソリッドステートMEMSに置き換えることにより、本質的にファンレスのファンを作ることができるからだ。われわれが開発した上下に動かせるMEMS構造は、空気流の機能を担うため、ファンと同じものとみなされるかもしれないが、動作方法や効率性という点では大きく異なる」(Housholder氏)

 また同氏は、「xMEMSが新しい冷却チップで提供するこの新分野には、標準規格が存在しない。しかし、当社の半導体プロセスは、TSMCやBoschなどのファブパートナーと連携してスケーリングすることにより、量産にも対応可能だ。このサプライチェーンは既に機能しており、当社のオーディオ製品向けに大量に出荷している。われわれは、完全に機能する実証されたサプライチェーンを確保しているのだ」と強調する。

約10年前から研究されてきた分野

 薄型デバイス向けのアクティブ冷却は新しい分野だといえるが、その研究は少なくとも10年前から行われてきた。米ジョージア工科大学の電気およびコンピュータ工学部(Electrical and Computer Engineering)教授であり、IEEEフェローを務めるSaibal Mukhopadhyay氏は、EE Timesのインタビューの中で、「モバイルデバイスの冷却については、2014年当時にはあまり関心が集まらなかったが、今や重要な問題になりつつある」と述べている。

 Mukhopadhyay氏は、「モバイルデバイスの冷却に関する主な課題は、スペースの不足とコストだ。これまでの研究の中には、Qualcommの『Snapdragon』プロセッサで圧電ポンプを使用できるかを検討した取り組みなどがある。これは2016年に実施したものだ」と続けた。

 「もう1つの手法としては、熱電変換技術を適用して半導体チップの特定部分を冷却するものがある。熱電デバイスをパッケージ内に集積することで、熱くなっているエリアを電気的に制御し、冷却機能を高めるのだ」(Mukhopadhyay氏)

 ジョージア工科大学はこの他にも、半導体チップが高温になると状態を変化させるサーマルキャパシターとして機能する、位相変化材料の研究に取り組んでいるという。

【翻訳:滝本麻貴、田中留美、編集:EE Times Japan】

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