ファウンドリーであるTower Semiconductorが、シリコンフォトニクス事業を強化している。同社はIntelファブを活用するなど、生産能力の強化とシリコンフォトニクスのシェア拡大に向けて着実に準備を進めている。
「Tower Semiconductor(以下、Tower)はAI(人工知能)ブームを支えるチップの需要の波に乗っている」。イスラエルのチップファウンドリーであるTowerのプレジデントを務めるMarco Racanelli氏は、米国EE Timesに対してこのように語った。アナリストらによると、Towerは、データ伝送を高速化し電力を節約するシリコンフォトニクスとシリコンゲルマニウムの生産で競合他社をリードしているという。
ファウンドリー事業で7位のTowerは、この新技術により、同じくフォトニクス事業に参入している1位のTSMCやIntelなどの大手競合他社に対して競争上の優位を獲得している。中国では、米国主導のEUV(極端紫外線)ツールの輸出禁止措置が中国の先進チップ製造の進展を阻んできた状況を、シリコンフォトニクスによって回避できると考える向きもある。
Racanelli氏は、「AIに関しては、シリコンフォトニクスとシリコンゲルマニウムの両方で非常に大きな需要が見込まれる。当社は、AI用モジュールに組み込まれるアンプやトランスインピーダンスアンプ、ドライバーをシリコンゲルマニウムで製造している。さらに、シリコンフォトニクスで、あらゆる光学部品を製造している」と述べる。
同社は、パートナーでチップ設計者/IPプロバイダーであるOpenLightのレーザー技術を活用して、フォトニクスのポートフォリオを拡大したいと考えている。TowerとOpenLightは、シリコンフォトニクスチップの製造に向けてエコシステムを構築している。
Racanelli氏は、「次世代では、ある時点でOpenLightのプロセスを使用してレーザーを統合する機会があると考えている」と述べている。
Towerは、2024年のシリコンフォトニクスの収益が2倍以上の約1億米ドルになると予想している。Racanelli氏によると、2025年はさらに倍増する可能性が高いという。同氏はさらに、「この事業は1〜2年以内に当社の総収益の約10%を占めるまでに成長するだろう」と付け加えた。
米国の投資銀行および調査会社であるCraig-Hallumのアナリストで電子工学エンジニアでもあるRichard Shannon氏によると、Towerのシリコンフォトニクスの顧客は50社を超え、そのうち7社はデータ通信トランシーバーメーカーの上位11社だという。
Shannon氏はEE Timesに提供したレポートで、「シリコンフォトニクスは、低コストで低消費電力のトランシーバーを実現すると確信しており、800Gおよび1.6T世代に向けて大きな前進を遂げると期待している」と述べている。
最新の800Gトランシーバーは膨大な量のデータを伝送する。今日のデータセンター向けフォトニクス部品のほとんどには、スイッチやGPUボードに挿入する標準プラグがある。このプラグ方式は、シリコンベースのCPO(Co-Packaged Optics)に移行しつつあり、変換インタフェースは演算器に、より近い位置に配置されるようになっている。
Shannon氏は、「Towerには高度なカスタマイズが可能なプロセスがあり、他社にはない顧客要件に合わせたソリューションを提供できる。これによって、プラグ可能な製品で圧倒的なシェアを獲得できたと考えている」と説明している。
「Towerはハイブリッドレーザー搭載バージョンも用意しており、近い将来に市場投入予定だ」(Shannon氏)
Racanelli氏は、「AIやDCI(データセンターインターコネクト)、ネットワーキング向けに光ファイバーを使用する全ての人々が、光トランシーバーを購入するようになるだろう」と述べる。
「この急成長は、AIによるものだ。細かく分析するのは少し難しいが、全体としては成長の大半がAIによるものと確信している」(Racanelli氏)
Shannon氏は、「データコム光トランシーバーは全て、トランスインピーダンスアンプ(TIA)とドライバーが必要だ。Towerは、50%を超えるシェアで市場をリードし、Macom TechnologyやSemtechなどの業界リーダーに製品を供給している」と述べる。
「LPO(Linear Drive Pluggable Optics)が始動すれば、TIAとドライバーの価値が高まり、さらなる成長が見込まれる。Towerは、アクティブ銅線ケーブル(ACC)の主要ファウンドリーであり、現在ではNVIDIAの『Blackwell』ラックで幅広く使われている」(Shannon氏)
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