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バイデン政権の置き土産 「CHIPS法」の効果を検証する米シンクタンクが報告書を発表(3/4 ページ)

» 2025年01月24日 11時30分 公開
[Nitin DahadEE Times]

5つの疑問

 ピーターソン報告書は、さらに5つの質問を提示しており、これについては報告書の中で詳細に議論されている。その質問内容と回答を以下に記す。

質問1:CHIPS法の企業やその国内競合企業は、連邦助成金がなくても米国ファブに同程度の投資を行っただろうか。答えはNO。

質問2:CHIPS法は、米国の経済と国家安全保障を強化できるのか。答えは、生産量の増加によって安全保障が向上する場合はYES。しかし、生産量が増加してもコストに見合った最善の安全保障を提供できない可能性はある。

質問3:CHIPS法は、米国の輸入チップへの依存を減らすことができるだろうか。答え:報告書では懐疑的である。

質問4:米国は、2030年までに世界の先端チップの20%を生産するようになるか。答え:恐らく。

質問5:どれくらいの雇用が創出され、雇用年当たりの補助金はいくらになるか。答え:約9万3000の建設雇用と4万3000の常用雇用が創出され、雇用年当たりの平均補助金は18万5000米ドルである。

 米国のCHIPS法の交付金において、補助金パッケージには2つの明確な要素がある。一つは、商務省が国家安全保障への貢献を重視して申請プロジェクトのメリットを精査した上で、補助金と融資を交付すること。もう一つは、申請者が、政府官僚による審査や安全保障条件なしに、適格な半導体製造に対して25%の投資税額控除を申請できることである。投資税額控除の払い戻しはできない。

 従って、報告書では、CHIPS法の融資資格を獲得したプロジェクトにとって、自動投資税額控除(ほとんどの場合、助成金と融資を合わせた額より大きな補助金)に加えて、助成金と融資が必要であったかどうかについて、それぞれのケースで疑問を呈している。

 ピーターソン報告書は、次のように述べている。

 「本報告書は、設備投資の記録に基づき、投資税額控除はCPO(CHIPSプログラムオフィス)が選定したプロジェクトを進める上で必要条件であったが、十分な条件ではなかったと結論付ける。CPOの専門家は、補助金、場合によっては融資が、各対象プロジェクトの立ち上げに不可欠であると判断している。これが、建設に“インセンティブを付与する”という商務省の公約の明確な意味である。外部評価者は、CPOの詳細なスプレッドシートにアクセスできないため、CPOの専門家が事業に精通しており、各対象プロジェクトには補助金(場合によっては譲許的融資による補完)が不可欠であると結論づける可能性がある。

 本報告書は、2つの理由から、若干懐疑的に見ている。1つは、成熟チップやレガシーチップを製造するプロジェクトは、定義上ほぼ、必要な技術を複数の国内企業が保有するチップを生産することになる。従って、助成金や譲許的融資を受けていない別の国内企業が、25%の投資税額控除(および州または地方の助成金)のみをインセンティブとして、同様の成熟チップを製造できた可能性は十分にある。さらに、対象企業の財務状況が堅調であれば、CHIPS法の助成金や譲許的融資を受けずに、これらのインセンティブだけでチップを製造できた可能性もある。

 第2に、先進または最先端のチップを製造するプロジェクト、または高度なATP(Advanced Threat Prevention)サービスは、定義上ほぼ、独自の技術を導入している。従って、対象企業の財務状況が堅調である場合、特別な事情がない限り、助成金や譲許的融資を受けずに投資税額控除を利用してチップを生産したり、ATPサービスを提供したりできたかもしれない。もし対象企業の財務状況が堅調でない場合は、投資税額控除とともに、助成金や譲許的融資が不可欠だった可能性がある」

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