その電池、純正ですか? 非破壊で識別する手法を開発:電池から発生する磁場を測定
筑波大学システム情報系の秋元祐太朗助教らによる研究グループは、磁気センサーを用い、リチウムイオン電池が純正品かどうかを非接触で識別する方法を開発した。
筑波大学システム情報系の秋元祐太朗助教らによる研究グループは2025年1月、磁気センサーを用い、リチウムイオン電池が純正品かどうかを非接触で識別する方法を開発したと発表した。
リチウムイオン電池はスマートフォンやPC、電気自動車などに搭載され、需要が拡大している。こうした中で、「互換バッテリー」と呼ばれる純正品ではない低品質のリチウムイオン電池も登場。互換バッテリーに交換すると火災など事故が発生する危険性もある。ところが、形状の規格化などにより、外観のみで純正品かどうかを判断するのが難しくなっているという。
研究グループはこれまで、磁気センサーを用いリチウムイオン電池の電流分布を解析し、非破壊で故障を判定する方法を開発してきた。今回はリチウムイオン電池自体の磁場に着目、磁気解析により純正のリチウムイオン電池かどうかを非破壊で識別する方法の開発に取り組んだ。
実験では、5Ah級角型リチウムイオン電池を用い、外装のさまざまな場所に磁気センサーを取り付けて磁場を測定した。この結果、リチウムイオン電池のセル短辺で、磁場を測定できた。発生する磁場の分布は、集電体の形状によって電流密度に違いが生じるため、とみられている。また、2つのセルを直列に接続したリチウムイオン電池モジュールにおいても、同様の磁場分布となった。
これらのことから、磁気センサーを適切に配置して磁場を測定すれば、集電体の形状によって発生磁場が異なるため、リチウムイオン電池が純正品かどうかを非破壊で識別できるという。
磁気センサーを取り付けた箱型リチウムイオン電池セル[クリックで拡大] 出所:筑波大学
形状が異なる集電体の外形図と磁場測定結果の一例[クリックで拡大] 出所:筑波大学
今後は、電池が複数接続されるモジュール内での検証や、劣化を含めた診断技術の確立を目指す。なお今回の研究は、本田技術研究所との共同研究契約に基づき行われた。
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