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UVナノインプリントによるシリコンフォトニクスプロセスを開発光硬化性樹脂を新たに開発(1/2 ページ)

東京科学大学と東京応化工業は、UVナノインプリントリソグラフィー(UV-NIL)を用いたシリコンフォトニクス半導体プロセスを開発した。開発した光硬化性樹脂と同プロセスを用いて試作したシリコン導波路は、電子線描画を用いて作製した光導波路と同等レベルの性能が得られることを確認した。

» 2025年01月31日 09時30分 公開
[馬本隆綱EE Times Japan]

試作したシリコン導波路の特性は電子線描画による光導波路と同程度

 東京科学大学(Science Tokyo)と東京応化工業は2025年1月、UVナノインプリントリソグラフィー(UV-NIL)を用いたシリコンフォトニクス半導体プロセスを開発したと発表した。新たに開発した光硬化性樹脂と同プロセスを用いて試作したシリコン導波路は、電子線描画を用いて作製した光導波路と同等レベルの性能が得られることを確認した。

 ナノインプリントリソグラフィー(NIL)は、ナノスケールのスタンプをウエハーに押しつけ、微細な回路パターンを転写する技術。解像度が露光波長に依存しないことや、大きな面積に転写でき高いスループットが得られる、といった特長があるため次世代のリソグラフィー技術として注目されている。

 また、DFB(分布帰還型)レーザーにおける回折格子の形成、光回路の入出力に使用するグレーティングカプラの形成、シリコンフォトニクス光回路における導波路の形成など、大規模な光回路をウエハー上に作製するため、NIL技術を導入する動きもあるという。そこで研究グループは、シリコンフォトニクスに着目し、UV-NILを導入したプロセスの開発に取り組んだ。

主なリソグラフィー技術の性能指数[クリックで拡大] 出所:東京科学大学他 主なリソグラフィー技術の性能指数[クリックで拡大] 出所:東京科学大学他

 今回の研究では、東京科学大学内に設立された東京応化工業未来創造協働研究拠点において、シリコンフォトニクスプロセスに適したNIL用の光硬化性樹脂を開発した。この樹脂はUV-NILの標準仕様に加えて、3つの特長があるという。

 その特長として、「SF6-C4F8混合ガスによるドライエッチングへの最適化」「O2アッシングによる除去性」「ワーキングスタンプ剤との親和性」を挙げた。

開発した光硬化性樹脂[クリックで拡大] 出所:東京科学大学他 開発した光硬化性樹脂[クリックで拡大] 出所:東京科学大学他

 今回開発したシリコンフォトニクス半導体プロセスは、2つのプロセスフローに分かれている。「NIL工程」と「光回路形成工程」である。NIL工程では、光硬化性樹脂の膜厚と充填率、回路レイアウトなどを最適化することによって、膜厚20nm以下の残膜制御を可能にした。光回路形成工程は、マスクとして用いた光硬化性樹脂を除去するために行うO2プラズマアッシング処理以外は、標準的なシリコンフォトニクスプロセスと同じ手順だという。

UV-NILによるシリコンフォトニクスプロセス。上段と中段がNIL工程、下段が光回路形成工程[クリックで拡大] 出所:東京科学大学他 UV-NILによるシリコンフォトニクスプロセス。上段と中段がNIL工程、下段が光回路形成工程[クリックで拡大] 出所:東京科学大学他
上段がNILによるパターン形成後、中段がSF6-C4F8混合ガスによるエッチング後、下段がO2プラズマアッシング後における走査電子顕微鏡画像[クリックで拡大] 出所:東京科学大学他 上段がNILによるパターン形成後、中段がSF6-C4F8混合ガスによるエッチング後、下段がO2プラズマアッシング後における走査電子顕微鏡画像[クリックで拡大] 出所:東京科学大学他
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