イリノイ大学アーバナシャンペーン校で化学工学を研究するXiao Su氏のチームは、電界駆動でPFASを除去できるナノろ過技術を発表した。チームは商用化を目指していて、ベンチャーキャピタルや半導体メーカーが関心を寄せているという。
University of Illinois at Urbana-Champaign(イリノイ大学アーバナシャンペーン校)の化学工学を専門とする教授であるXiao Su氏は、米国EE Timesに対し、同氏が率いるチームが半導体製造プロセスから有機フッ素化合物であるPFAS(パーフルオロキルおよびポリフルオロアルキル物質/per- and polyfluoroalkyl substance)を除去するプロセスを開発したと語った。しかし、同氏の助けを借りることができるはずの半導体メーカーは、同氏に情報を共有していないという。
PFASは人体組織に蓄積する有毒化学物質で、半導体産業で広く使用されている。分解が難しいことから「永遠の化学物質」とも呼ばれ、半導体メーカーにとってPFASの排出に関する情報は機密扱いだ。
Su氏はEE Timesに「半導体業界の廃棄物処理方法はかなり不透明だが、恐らく従来技術が使われている。それは非常にコストがかかるうえ、PFASを対象としていないものだ」と語った。
PFASは、半導体メーカーが使用するフォトレジスト液やエッチングチャンバーガスのほか、純水供給システムやデータバックアップに使用するリチウム電池、半導体パッケージにも含まれる。半導体業界団体のSEMIによると、他にも数千のユースケースがあるという。
Su氏は「工場からどれだけのPFASが排出されているのかは分からない。半導体分野でのPFAS除去を対象とした技術の導入は、間違いなくまだ始まったばかりだ」と言う。
2024年11月、Su氏のチームは、重要部分であるシステムの膜を汚染することなく、電界駆動でPFASを除去できるナノろ過技術を発表した。チームはベンチスケールのプロトタイプ製作を完了していて、3年以内に商用化できると考えているという。同氏は「ベンチャーキャピタルや半導体メーカーが生産規模の拡大に関心を示している」としたが、企業名は明かさなかった。
Su氏によると、PFAS除去システムの導入コストは、半導体工場内の装置の設置場所によって異なるという。
「工場のどの段階に配置するのか、つまり建造物自体の中に設置するか、パイプの端に設置するかについて、徹底的な技術的分析を行う必要があるので、活発に議論が行われている。廃棄物の流れを集約して、パイプの端で複数の処理技術を適用することもできる。そうすればコストがあまり増えずに済む」(Su氏)
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