ヌヴォトン テクノロジージャパンは、産業用48V向け17セル対応のバッテリー監視ICとして新たに2製品を開発、量産を始める。蓄電システムの安全性向上とシステムコストの削減が可能となる。
ヌヴォトン テクノロジージャパンは2025年2月、産業用48V向け17セル対応のバッテリー監視ICとして新たに2製品を開発、量産を始めると発表した。蓄電システムの安全性向上とシステムコストの削減が可能となる。
データセンターなどでは電力の安定供給に向けて、より大容量で高出力の蓄電システムが求められている。このため、従来の鉛蓄電池からリチウムイオン電池に置き換えるケースが増えているという。「小型軽量でエネルギー密度が高い」などの特長を有するリチウムイオン電池だが、フェイルセーフ機能を設けるなど安全対策が必要で製造コストが高くなるなど課題もあった。
バッテリーマネジメントシステム(BMS)は、電池の端子電圧や温度、電流などをより正確に測定し、過充電や過放電などの異常を検知したら、バッテリー監視ICがその情報をマイコンに伝え回路を遮断する。これによって安全性を確保している。また、バッテリー監視ICはA-Dコンバーターやマルチプレクサを内蔵している。セル電圧を計測するこれらの回路が故障した場合に備え、フェイルセーフ機能を設ける必要がある。
これまでは外部に保護回路を設け、こうした課題に対応してきた。このため、実装する基板の面積や部材コストが増加する要因となっていた。これに対し新開発のバッテリー監視ICは、故障診断機能とフェイルセーフ機能を内蔵した。これによって、外部の保護回路が不要となり、シンプルな回路構成が可能となった。
電圧測定精度は±2.9mVである。16ビットA-Dコンバーターの低ノイズ化やデジタルフィルター搭載によって、業界最高水準の精度を実現した。セル電圧の測定精度を高めたことで、電池の使用範囲が広がり、電池容量を効率よく活用できるという。さらに、広い温度範囲でも高い精度を実現しており、−20〜65℃という温度範囲で誤差±5mV以下が求められる「中国国家標準規格」にも対応した。
電池の長時間駆動や電池パックの長期保存なども可能となった。開発したバッテリー監視ICは、動作時の消費電流が260μAである。同社従来製品に比べ10分の1以下に抑えた。シャットダウン時の消費電流は0.1μA以下とした。この結果、自己放電を最小限に抑え、電池の長距離輸送や長期保存による劣化を防ぐ事ができるという。
同社の産業機器向けバッテリー監視ICとしては第4世代の製品となる。今回開発した2製品は、充放電制御方式がローサイドスイッチの「KA49701A」と、ハイサイドスイッチの「KA49702A」である。
主な仕様は、接続セル数が最大17セルで、正極にリン酸鉄を用いたリン酸鉄リチウムイオン電池などにも対応できる。定格電圧は85V、電流測定精度は±1.0%、パッケージは外形寸法が7×7mmの48端子QFPで供給する。サンプル価格は2.4米ドルである。評価ボードも用意した。価格は仕向け先により異なるが300〜400米ドルを想定している。
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