3nm世代のプロセスを適用したチップが続々と登場している。2023年発売された「iPhone 15 Pro」に搭載しされたプロセッサ「Apple A17 Pro」を皮切りに、各社のフラッグシップスマートフォンに使われ始めている。今回は、その中からQualcommの「Snapdragon 8 Elite」とMediaTek「Dimensity 9400」を紹介したい。
プロセッサを3nm世代のプロセスで製造する動きが拡大している。2023年9月には、「Apple A17 Pro」プロセッサが、最初のTSMC 3nm適用チップとして「iPhone15 Pro」に搭載され市場デビューを果たした。同年11月にAppleは「MacBook Pro」に3nmで製造した「M3/M3 Pro/M3 Max」を一気に採用、さらに2024年5月には「M4」を搭載する「iPad Pro」の販売を開始した。上記5つのチップは全てTSMCが製造したAppleプロセッサだ。
6つ目の市販(容易に入手できる)3nmチップはSamsung Electronics(以下、Samsung)の3nm GAA(Gate All Around)プロセスで製造される「Exynos W1000」。Samsungの「Galaxy Watch7」に搭載されている。7つ目は2024年9〜10月に発売されたIntelのラップトップ向けプロセッサ「CORE Ultra(開発コード名:Luner Lake)とデスクトップ向けのCORE Ultra(同Arrow Lake)である。Intelはチップレットの一部として、TSMC 3nmを適用したCPU、もしくは自社製造のCPU/GPU/NPU(Neural Processing Unit)の2シリコンを使い分けている。
ほぼ同時期の8つ目チップは今回報告するQualcomm「Snapdragon 8 Elite」と、MediaTekの「Dimensity 9400」だ。両チップはハイエンドスマートフォン向けとして2024年10月末に中国Xiaomi、vivoの端末に採用され、デビューしている。2025年にはSamsungやソニーなどに採用されるチップとなる。2024年11月にはApple M4 Pro/M4 Maxが3nmで登場し、Mac miniやMacBook Proに採用されている。2024年後半に“大物製品”が続々と3nm製造となっていて、2025年にはさらに3nm製品が増えることは間違いないだろう。ミドルハイ仕様のスマートフォンや次世代のCopilot+ PCは、”3nm化”は確実だ。さらに2026年以降には車載分野やネットワーク分野にも3nm適用が広がるものと思われる。今回はスマートフォン向け3nmの新プロセッサ、Snapdragon 8 EliteとDimensity 9400について報告する。
図1はXiaomiのハイエンドスマートフォン「Xiaomi 15」に搭載されるSnapdragon 8 Eliteのパッケージの様子である。パッケージはメモリを積層するPOP(Package On Package)構造になっている。数年前まではハイエンドでもメモリ容量は6〜8GB(Gバイト)であったが2024年以降、搭載されるメモリ容量はほぼ倍増し、12〜16GBとなっている。パッケージ端子面にはプロセッサ演算器の電源安定化などに効果が大きいキャパシターが埋め込まれている。シリコンキャパシターとセラミックコンデンサーが併設されるハイブリッド構造だ。シリコンキャパシターは活性化率と周波数の高いCPUの直上に配置され、セラミックコンデンサーはGPUやカメラISP(Image Signal Processor)直上に配置されている。機能と特性を最適化するためだ。
図2はSnapdragon 8 Eliteのシリコンキャパシターの様子である。シリコン上には機能があるわけでなく容量が形成されている。製造はTSMC(製造プロセスは判明している)、設計はQualcommだ。セラミックコンデンサーと違って、サイズを設計で決めることができるので今後パッケージ埋め込み型のシリコンキャパシターは増えていくだろう。AppleのAシリーズ、Mシリーズ全プロセッサ、SamsungのExynos 2400、QualcommのPC向けSnapdragon X Eliteがシリコンキャパシターを採用済みだ。
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