金沢大学の研究グループは産業技術総合研究所などと共同で、完全に平たんなダイヤモンド表面をMOS界面に用いた「反転層チャネル型ダイヤモンドMOSFET」の作製に成功した。動作時の低抵抗化を実現したことで、ダイヤモンドMOSFETの性能を高めることが可能となる。
金沢大学の研究グループは2025年2月、産業技術総合研究所や独Diamond and Carbon Applicationsと共同で、完全に平たんなダイヤモンド表面をMOS界面に用いた「反転層チャネル型ダイヤモンドMOSFET」の作製に成功したと発表した。動作時の低抵抗化を実現したことで、ダイヤモンドMOSFETの性能を高めることが可能となる。
ダイヤモンドは高い絶縁破壊電界やキャリア移動度、熱伝導率を有しており、次世代パワーデバイスの材料として期待されている。研究グループではこれまで、独自のダイヤモンド成長技術や表面・界面制御技術を開発し、反転層チャネル型ダイヤモンドMOSFETを開発し、動作実証に成功してきた。ただ、これまでは動作時の高い抵抗が課題となっていた。
研究グループは、この原因の1つとして、ダイヤモンドMOS界面の荒れによって、チャネルの散乱因子が多く存在することを突き止めた。これらの研究成果を踏まえて、完全に平たんなダイヤモンド表面をMOS界面に用い、デバイスの低抵抗化を目指した。
そして今回、完全平たん表面を持つダイヤモンド半導体層の選択的埋め込み成長技術を適用し、完全に平たんなダイヤモンド表面をMOS界面に用いた反転層チャネル型ダイヤモンドMOSFETを作製することに成功した。
試作したデバイスを評価したところ、「ノーマリーオフ動作」「ゲート電圧制御」といった、反転層チャネル型MOSFETの特性を示した。また、開発したMOSFETのドレイン電流密度(Id)は、2016年に作製したMOSFETのIdに比べ12.5倍に向上したことを確認しており、低抵抗化に成功した。
今回の研究成果は、金沢大学ナノマテリアル研究所の徳田規夫教授、自然科学研究科電子情報科学専攻博士後期課程/卓越大学院の小林和樹らによる研究グループと、産業技術総合研究所先進パワーエレクトロニクス研究センターの牧野俊晴研究チーム長、独 Diamond and Carbon Applicationsのクリストフ E.ネーベルCEOらによるものである。
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