TSMCがトランプ政権の要請でIntel Foundryの経営権獲得交渉中であるというBloombergの報道が半導体業界を震撼させているさなか、今度はThe Wall Street Journalが、BroadcomがIntelのCPU事業買収を検討しているという衝撃のニュースを報じた。われわれは、リアルタイムで米国企業の象徴の崩壊を目の当たりにしている可能性が高い。
米国のチップ製造国内化推進の最大の受益者であるIntelに、何が起こっているのだろうか。TSMCがトランプ政権の要請でIntel Foundryの経営権獲得交渉中であるというBloombergの報道が半導体業界を震撼させているさなか、今度はThe Wall Street Journal(WSJ)が、BroadcomがIntelのCPU事業買収を検討しているという衝撃のニュースを報じた。
かつては半導体技術の覇者として君臨したIntelだが、この10年近くは迷走を続けている。非常に野心的だった元CEO、Pat Gelsinger氏は、ファウンドリー事業参入のために巨額の投資を行ったが、これは結局、同社にとって大きな負債となった。
その一方で、主力のCPU事業ではライバルAMDにシェアを奪われ続け、AIチップの一大ブームは完全にNVIDIAに譲った。Bloombergによると、こうした背景からジョー・バイデン前米国政権は、Intel FoundryとGlobalFoundries(GF)の合併を検討していたという。GFは旧世代のチップを生産していて、最先端プロセスノードに関する取り組みは数年前に断念している。
前政権によるこのもくろみは失敗に終わったが、トランプ政権はより現実的なアプローチとして、TSMCにIntelのファウンドリーの一部を所有させることで、資金難に陥るIntelに経済的な救いの手を差し伸べたいようだ。ファウンドリー事業を完全に掌握しているTSMCは、同社の優れた製造プロセスレシピによってIntelの同事業に安定をもたらすことが期待される。
ただし、Bloombergが報道で指摘するように、この協議は初期段階のもので、TSMC側へのメリットは明らかではない。同社は数カ月前にIntelのファウンドリー事業に関心がないことを表明していた。この件に関するTSMCの態度変容は、現在の地政学的混乱と関連しているようだ。この件に関する詳細は近日中に明らかになる見込みだ。
BroadcomがIntelのCPUおよび関連設計事業を買収する可能性がある、というのはそれほど不可解なものではない。WSJの記事によると、BroadcomはIntelの半導体設計事業を買収する可能性を検討しているという。これがTSMCによるIntel Foundry買収の可能性とともに本格化していけば、われわれが知るIntelブランドは終焉を迎えることになる。
ただし、TSMCの件と同様に、IntelとBroadcomの協議に関する報道は、速報的なもので、大部分が非公式なものだ。さらに、BroadcomはIntelが製造パートナーを見つけた場合にのみ話を進めるとしていて、ここでBroadcomとTSMCが別々に動いていることに注意する必要がある。
われわれは、リアルタイムで米国企業の象徴の崩壊を目の当たりにしている可能性が高い。これは、Intelのような歴史ある著名企業でさえ失策を免れない、半導体業界の過当競争体質を如実に物語っている。
Intelの苦境は明らかに反省の段階を越えていて、Gelsinger氏在任中に受けたダメージは修復不可能と思われる。しかし、米政権もIntelは国家安全保障に不可欠な企業だと考えている。それが不幸中の幸いとなるのか、それともIntelが早急に消滅するきっかけとなるのか。それは、時間が明らかにするだろう。
【翻訳、編集:EE Times Japan】
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