なぜ今、仮想化基地局の開発を本格化させるのかについては、京セラ KWIC 副統括部長の堀正明氏が「通信インフラ業界が大きな変革期を迎えているためだ」と説明した。現在は専用RANが用いられているが、2027年ごろからはOpen RANやvRANが普及し、2029年ごろからはAI-RANが台頭すると予想される。堀氏は「AI-RANは従来のRANとは全く次元の異なるものになるだろう。プレイヤーが入れ替わり、新規参入のチャンスが訪れる。それを見越して、2020年ごろからAIを活用した仮想化基地局の準備を進めてきた」と語った。
さらに、堀氏は「グローバルベンダーによるロックイン状態が続く通信インフラ業界で、Open RANのけん引役を果たしていきたい」とした。
CU/DU/RUといった各機器をつなぐインタフェースは一般に公開されていないため、既設の装置に接続できる機器は同一ベンダーの機器か、一部インタフェースが公開されたベンダーの機器のみに限られ、システム設計の自由度が小さい。このことから、近年では異なるベンダーの機器を相互接続し、システムの自由度を高めるRANのオープン化が推進されている。京セラはOpen RANに取り組むことで、寡占状態の解消を目指すという。
2025年3月3日には、Open RANの普及促進とエコシステム構築に向けた通信ベンダー6社とのアライアンス「O-RU Alliance」を設立する。参画企業は韓国のHFRとSOLiD、台湾のAlpha NetworksとMicroelectronics TechnologyとWNC、インドのVVDN Technologiesだ。
今後、京セラのCU/DUをオープンに開放し、互換性があり柔軟なOpen RAN環境の普及を目指す。堀氏はOpen RANについて「社会インフラである以上、キャリア側からすると『Open RANの性能や信頼性については誰が保証してくれるのか』という課題がある。そこをこのアライアンスで乗り越えていきたい」とした。
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