今回の課税案は、世界第2位および第3位の造船大国である韓国と日本の造船業界にチャンスをもたらすかもしれない。あるアナリストは「米国内に造船所を建設するよりも、韓国や日本に船舶を発注する方がより現実的だ」と指摘している。
韓国はガスタンカーの製造で知られていて、米国の液化天然ガスの輸出増加による利益を得られる可能性がある。韓国のコングロマリットであるHanwha Groupは、米国海軍の船舶を維持、補修するフィラデルフィア海軍造船所を1億米ドルで買収した。ただ、同造船所の経営状態や、米国施設を韓国標準にアップグレードしなければならないといった課題がある。
台湾の海運業界も、中国製船舶の所有割合がごくわずかであることから、こうした動きによる利益を得るとみられる。しかし、このようなチャンスにもかかわらず、韓国と日本、台湾は、中国が残した穴を埋める上では限界があるかもしれない。
トランプ大統領は中国を標的とすることに加えてEUについても「米国をつぶすために形成された」と非難し、EU製品にも25%の関税を課すことを検討している。
トランプ大統領は「われわれは既に決断を下していて、近々発表を予定している。一般的には25%の関税とし、自動車をはじめとする全ての製品に対して課す予定だ」と述べた。
欧州委員会(EC)は「EUは、自由かつ公正な貿易に対する不当な障壁に対し、直ちに断固たる措置を取る」と警告している。
これらの措置は第二次世界大戦後の貿易システムからの脱却を意味し、各国の「自給自足」への動きを示している。この課税案が実行されれば、国際輸送は混乱に陥り、ビジネスの不透明性が増大することになるだろう。
トランプ政権の政策は、貿易にとどまらず、投資や技術、中国資本企業に依存している企業にも拡大される可能性がある。
欧州の一部では、トランプ政権がEUの弱体化を狙っているのではないかという懸念が強まっている。あるアナリストは「トランプ政権は、ウクライナを皮切りに、欧州を破壊しようとしている」と述べる。
トランプ政権が「アメリカ・ファースト」政策を進めるにつれ、世界貿易情勢は不安定さを増し、さらなる対立の可能性が高まるという問題に直面している。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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