Intelは、Cadence Design Systemsの元CEOであるLip-Bu Tan氏を新しいCEOに任命した。
経営不振に陥っているIntelは、2024年12月にPat Gelsinger氏をCEOの座からあっさりと降ろした後、業界のベテランで長年Cadence Design Systems(以下、Cadence)のCEOを務めてきたLip-Bu Tan氏を新CEOに任命した。
Tan氏はEDA業界出身で、2009年から2021年までCadenceのCEOを務めた。EDAの主要企業は3社しかないが、ファブレス半導体企業とそのチップを製造するファウンドリーをつなげる接着剤の役割を果たしていて、業界ではややユニークな立場にある。
垂直統合型デバイスメーカー(IDM)であるIntelは、自社でチップの設計と製造を行っているが、ファウンドリーとして他社向けのチップも製造するよう準備している。Gelsinger氏がIntelを去ったとき、筆者は設計と製造の両方の経験を備えた、Intelにふさわしい新CEOは存在しないのではないかと心配した。しかし、Tan氏はEDAでの経歴を持ち、長い間両方の世界に足を踏み入れてきた人物だ。
Tan氏はCadenceでの経験と2年間のIntel取締役の経験からIntelを比較的よく知っている。筆者が懸念していたことの1つは、業界で十分な経験を積んでIntelのCEOにふさわしいような人は、既に他の半導体企業でCEOの座についているだろうということだった。そして、その地位を離れてIntelでの巨大な仕事を引き受ける人がいるだろうかと考えていた。2021年にCadenceを退職したTan氏は、その条件にぴったりだ。
Intelが直面している最大の課題の1つは、同社がIDMのままでいるべきか、ファウンドリー事業を分離またはスピンアウトさせるべきかという問題だ。これは、IntelをIntelたらしめているものの重要な部分を捨て去り、会社を事実上2つに分割する劇的な変化だ。Intelの設計部門と製造部門の相乗効果と相互作用は、同社の成功の秘訣の大きな部分を占めている。
Gelsinger氏はCEO在任中、Intelのファウンドリービジネスに注力していた。これは長期的な戦略であるにも関わらず、ウォール街はそれをやり遂げることを焦りすぎていたようだ。筆者がIntelに対して恐れていたのは、短期的な財務状況を改善するために、業界外からCEOを連れてきて「徹底的にやってやろう」とすることで、設計と製造の分割というアイデアをさらに加速させる可能性があることだった。だがTan氏が任命されたということは、取締役会は分割を望んでいるわけではなく、Gelsinger氏が解任されたのもそれが理由ではないといえそうだ。
従業員宛ての手紙の中でTan氏は「自分のリーダーシップの下でIntelが世界クラスの半導体企業としての地位を回復し、さらに世界クラスのファウンドリーとしての地位を確立できるよう懸命に努力する」と述べ、IDMとしてのIntelのまれな優位性を理解し、信じていることを示唆した。この言葉は心強い。長年にわたって業界で実績を積んできた人物が任命されたことは、大きな安心感を与えてくれる。それは、分割が避けられない場合でも、少なくとも不当な理由によるものにはならないことを意味するからだ。
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