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エレクトロニクス産業は「日本に追い風」 業界全体で底上げ目指す段階に米国への投資にブレーキ(2/3 ページ)

» 2025年03月31日 11時30分 公開
[村尾麻悠子EE Times Japan]

AI PCによる市場回復に期待

――2025年の半導体市場については、どのようにみていますか。2024年の世界半導体市場は過去最高となり、初めて6000億米ドルを超えました。ただ、その成長はAI用半導体とメモリを手掛けるメーカーに大きく偏っています。

南川氏 アナログ/パワー半導体メーカーにとっては厳しい状況が続いている。ただ、AI PCが市場に投入されたことで、PC市場は2024年よりも回復基調に向かう可能性がある。AI PCは想定以上に安価な価格帯なので、買い替えが進み、予想以上の回復を遂げるかもしれない。

 産業機器市場は、中国では底を打ち、少し持ち直している。だが、日本にオーダーが来ていない。中国の産業機器メーカーは軒並み自国の製品を使っているようだ。日本製品からのリプレースが進んでいる。中国政府が、半導体の地産地消を促進しているので仕方のないことだが、日本メーカーも新しい市場を早急に開拓していく必要がある。中国との関係を断つ必要はないが、今以上に積極的に他の地域に出ていかなければならないだろう。

 中国は「製造2025」で、2025年までに半導体の自給率を70%に引き上げる計画を進めていたが、さすがにそれは困難だった。今は「製造2030」で、自給率75%を目指している。日本製品からのリプレースはさらに進むと考え、十分に準備をすることが重要だ。

日本政府の「本気度」を業界も感じ取っている

――日本ではRapidusが4月に試作ラインを稼働させる予定です。政府によるRapidusへの支援については賛否両論があります。日本政府の半導体政策についてはどのようにお考えですか。

南川氏 半導体政策に対する批判の声は少なくなっている印象を受ける。特に40代、50代の業界関係者は、政府の本気度を感じ取っている。若い人たちの間でも半導体業界への関心は少しずつ高まっていて、学生も興味を持ち始めているので、あと2〜3年したらだいぶ状況が変わるだろう。建設的ではない批判を続けるのではなく、日本の半導体産業の活性化に向けて業界全体で取り組むべき時期に来ているのではないか。

RapidusとIBMが試作した2nm GAA(Gate All Around)ウエハー。「SEMICON Japan 2024」のRapidusブースで展示していたものをEE Times Japanが撮影[クリックで拡大] RapidusとIBMが試作した2nm GAA(Gate All Around)ウエハー。「SEMICON Japan 2024」のRapidusブースで展示していたものをEE Times Japanが撮影[クリックで拡大]

――半導体の製造に対しての支援が目立ちますが、半導体設計と半導体のユーザーも増やしていく必要があると思っています。

南川氏 政府はそこまで含めて戦略を立てている。技術研究組合最先端半導体技術センター(LSTC)とTenstorrent USAが2024年11月に、半導体設計の人材育成プログラムが新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)に採択されたと発表した。この詳細は間もなく出てくると聞いている。Tenstorrent USAでのOJT(On the Job Training)が予定されていて、28nmプロセス以降の最先端ロジック半導体をみっちり学べるプログラムだ。

 半導体のユーザーについても、データセンターや自動運転車などにRapidusのチップを使用するという動きもみられるようになってきた。2025年1月には、Rapidusとさくらインターネット、Preferred Networks(PFN)が国産AIインフラを提供すべく基本合意を締結したと発表した。今後はこうした動きが増えてくるのではないか。

Rapidus、さくらインターネット、Preferred Networks(PFN)による国産AIインフラ構築に向けた協業イメージ[クリックで拡大] 出所:PFN Rapidus、さくらインターネット、Preferred Networks(PFN)による国産AIインフラ構築に向けた協業イメージ[クリックで拡大] 出所:PFN

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