南川氏 もう一つ重要なのが、電子部品や基板などに対しても支援を強化している点だ。日本は電子部品も基板も強いメーカーが多数ある。2024年11月には、安定供給の確保が重要とされている特定重要物資として、初めてBAW(バルク弾性波)フィルターが指定された。電子部品の重要性を高める動きとして注目に値する。電子部品の分野は中国メーカーの追い上げが迫ってきている分野なので、ここも国のサポートが欠かせない。半導体以外の分野も底上げし、日本のエレクトロニクス産業を総合的に強化していく方向に、どんどん進んでいる。
総じて、エレクトロニクス産業という観点で日本はいい環境になってきている。円安の影響で海外からの投資も活発になっていて、外資系企業が日本での拠点設立や拡張に本腰を入れてきている。あとは日本で研究開発も行う方向になれば、よりよいのではないか。政府も、日本にimecのような組織を作ることを目指している。
――半導体製造の後工程についても、盛り上がってきていますね。
南川氏 相当活発になっている。Rapidusが後工程の開発を急ピッチで進めているが、やはりそこは少し遅れているのが実情だ。OSAT(Outsourced Semiconductor Assembly and Test)の日系メーカーは台湾などに比べると圧倒的に少ない。ここ数年、チップレット集積がトレンドになったことで「中工程」と呼ばれる分野が出現し、注目されているが、この中工程のプレイヤーも増えてほしい。ここについては今後、大きな動きがありそうだ。
「CoWoS(Chip on Wafer on Substrate)」や「EMIB(Embedded Multi-Die Interconnect Bridge)」のようなハイエンド向けパッケージング技術で追い上げることは極めて難しい。日本が強化すべきはPLP(Panel Level Packaging)技術で、ここは多数の関連中小企業がひしめいている日本が有利な分野だ。強いポイントを見極め、さらなる強化を図る戦略が日本にとって重要になる。
1982年、武蔵工業大学電気工学科卒業。1990年以降は世界の電子機器産業や半導体産業を中心にエレクトロニクス市場全般の分析・予測に従事。現在はInforma TechのリサーチブランドであるOmidaに所属。アジアでの調査・コンサルティングの領域を牽引するかたわら、国内外の半導体イベントでの講演、TV出演などの広報活動も行う。直近の活動についてはOmdia公式アカウントで発信中。
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