経営コンサルティング会社のAlbright Stonebridge Groupでテック企業のアドバイザーを務めるPaul Triolo氏は、EE Timesの取材に対して「NVIDIAのほぼ全ての最先端GPUの他、GoogleやAWS、Metaといった主要プレーヤーの各種AI ASICは、TSMCが台湾で生産している」と説明する。
「このような重度の依存はすぐには低減されないので、2030年までは大きな進展は見られないだろう。そして、依存の低減はTSMCのアリゾナ工場投資が順調に進み、IntelとSamsung Electronicsがこの分野で競争力を持つようになればの話だ」(Triolo氏)
IntelとSamsungが米国での生産開始を遅延させたことは、バイデン政権が策定した米CHIPS法(CHIPS and Science Act)の刺激策の結果が期待を下回る可能性があることの表れだ。両社はこれまで、AIの波に乗り遅れている。
Koch氏は「AIチップ製造の米国導入には何年もかかるだろう。米国政府は、主要な生産能力を導入するために、引き続き半導体メーカーにインセンティブを提供し、圧力をかけていく必要がある。さもなければ、われわれはAIチップ市場におけるリードを奪われるだけでなく、5年の間に中国に後れを取るというリスクに直面することになる」と述べている。
Triolo氏は、AI競争を米中間の競争と定義することにはリスクがあると考えている。
「一部では『汎用人工知能(AGI)や高性能機械学習(AML)で一番乗りを果たせば、勝者が決定的な戦略的優位性を獲得できる』とする主張があるが、これは危険な見解だ。なぜなら、AGIやAMLのためのハードウェア拠点は、この先も中国本土のすぐ近くに存在する台湾であり続けるからだ。これを巡るレトリックがさらに広がれば、米国が中国企業に対する規制を強めていることも相まって、台湾を巡る紛争の危険性が大幅に高まり、壊滅的な結果を招くことになる」(Triolo氏)
他のアナリストたちは「Musk氏がAIチップを巡る台湾への過度な依存について強調しているのは正しいことだ」と述べる。
技術調査会社TechInsightsの副会長を務めるDan Hutcheson氏は「Musk氏が言っていることは、私が過去10年以上にわたり主張してきたことと何ら変わりがない。Musk氏の見解は、単に現実的な政治分析の観点からのものである」としている。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.