Intelは現在、AIロードマップの再構築を進める中で、カリフォルニア州パロアルトに拠点を置くAIプロセッサスタートアップのSambaNovaに対して買収交渉を行っているという。カスタムAIチップメーカーであるSambaNovaは、資金調達ラウンドを完了するのに苦戦したことから、売却先の可能性を模索していた。
Bloombergが報じたところによると、Intelは現在、AIロードマップの再構築を進める中で、カリフォルニア州パロアルトに拠点を置くAIプロセッサスタートアップのSambaNovaに対して買収交渉を行っているという。カスタムAIチップメーカーであるSambaNovaは、資金調達ラウンドを完了するのに苦戦したことから、売却先の可能性を模索していたようだ。
Intelは、2025年中にリリース予定だったAIアクセラレータチップ「Falcon Shores(開発コードネーム)」の発売を中止した後、AI市場への参入計画を見直している。同社はこの再参入の一環として、空冷式エンタープライズサーバで動作する推論ワークロードに向けた、高効率の160GB GPU「Crescent Island(開発コードネーム)」を発表している。
Crescent Islandは、2026年後半の出荷開始を予定する。広帯域メモリ(HBM)に大きく依存しているAMDやNVIDIAのGPUとは異なり、160GBのメモリを搭載しているという。また、ここで注記すべき重要な点は、IntelがFalcon Shoresの発売を中止した時、「後継チップ『Jaguar Shores(開発コードネーム)』を用いて、ラックスケールのシステムレベルのソリューションの開発に注力していく」と明言していたことだ。
そしてSambaNovaが、AIハードウェア/ソフトウェアスタックを専業とし、NVIDIAのGPUとは全く異なるRDU(Reconfigurable Dataflow Unit)チップを採用しているのも、決して偶然ではない。このようなRDUは、数多くのオンチップメモリを搭載していて、ワークロードの並列化を重視するのではなく、ニューラルネットワークグラフ全体をハードウェアに直接マッピングできるよう最適化されている。
このため、メモリ動作によって生じる間接的な負荷を回避し、効率を高められる。さらに、このプロセッサアーキテクチャが大規模推論ワークロード向けとして適しているということも、今回の買収ストーリーの核心にあると考えられる。
IntelのCTO(最高技術責任者)であるSachin Katti氏は、米国カリフォルニア州サンノゼで2025年10月13〜16日に開催された「OCP Summit」において、業界がAIアプリケーション分野で、静的な学習からリアルタイム推論へと移行していることについて語った。同氏は「推論ワークロードに対応するには、特定のタスクに適合させたヘテロジニアスなシステムが必要だ」と強調している。
Intelはこれまで、「NVIDIAのGPUに代わるコスト効率の高い代替品を提供する」という戦略を進めてきたがうまくいかず、AMDが既にNVIDIAに続く位置を確保している。一方、SambaNovaは、NVIDIAが大規模AIモデルの学習向けチップ市場における支配的地位を強化した後、学習から推論へと方向転換した。その一環として、500人強の全従業員の約15%に相当する77人を解雇している。
SambaNovaは現在、学習済みAIモデルを実行するために最適化されたシステムを構築している。このシステムは同社の第4世代RDUである「SN40L」を中心に構築されていて、大容量ローカルメモリを搭載することで、AIモデルの実行に必要な性能をサポートするという。
SambaNovaはこのシステムの一環として、SN40Lを16個搭載した複数モジュールを中心に構築されたデータセンター向けソリューション「SambaRack」を提供している。また、クラウド型のAIプラットフォーム「SambaCloud」は、SN40Lを中心に構築され、DeepSeekやLlama、Qwenなどの幅広い推論モデルを支援する。さらに、フルマネージド推論クラウドである「SambaManaged」は、顧客企業のデータセンターインフラ内で構築できる。
このためIntelは、SambaNovaを買収することで、自社のAIロードマップの中核を成すAI推論向けに、半導体チップやシステム/クラウドの開発メーカーを入手できるのだ。
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