物質・材料研究機構(NIMS)は、Seagate Technologyとの共同研究で、HDDの記録効率を35%向上させる新たな記録原理を開発、HDDへの応用が可能なことを実証した。磁気記録時のエネルギーを削減し、HDDの耐久性と信頼性の向上につながるとみている。
物質・材料研究機構(NIMS)は2025年2月、Seagate Technologyとの共同研究で、HDDの記録効率を35%向上させる新たな記録原理を開発、HDDへの応用が可能なことを実証した。磁気記録時のエネルギーを削減し、HDDの耐久性と信頼性の向上につながるとみている。
HDDは、記録効率を高める技術として、熱アシスト磁気記録方式が採用されている。磁気ヘッドからレーザーを照射し、磁気記録媒体をキュリー温度(約450℃)付近まで加熱することで、磁化反転を容易にする方式。特にSeagate Technologyは2020年にこの方式を実用化し、2024年より量産を始めた。一方で、この方式は記録媒体を急激に加熱するため「磁気的な劣化」や「物理的ダメージ」といった課題もあった。
そこで今回は、従来の熱アシスト磁気記録とスピントルクの効果を組み合わせた記録方式を新たに考案した。実験では鉄白金(FePt)層の下にマンガン白金(MnPt)反強磁性層を挿入する新たな積層構造を開発した。
この試料にレーザーを照射すると、面直方向に温度差が発生する。この温度差によって生成されたスピンがFePt層に注入され、スピントルクとなって磁化反転を補完し、記録効率を向上させることが分かった。
さらに、超短パルスレーザーを用いたポンププローブ法により、磁気光学履歴曲線を測定した。この結果、レーザー照射により保磁力が最大80%低減、このうち約35%はスピントルク効果によることを確認した。さらに、スピンを効率的にFePt層へ注入するには、MnPt反強磁性層との界面を平たんにすることが重要であることも明らかにした。
熱電モジュール向け新材料「熱電永久磁石」を開発
有機半導体で高精度な薄膜型イオンセンサーを開発
金属リチウム電池の寿命を高精度に予測するモデル
超短グラフェンプラズモン波束を電気的に発生、制御
不揮発メモリ機能発現に重要な役割を果たす酸素空孔
モアレ励起子の量子コヒーレンス時間を直接測定Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
記事ランキング