ロームが今回開発したのは、OBCのPFCやLLCコンバーターに向けた、4in1および6in1構成のSiCモールドタイプモジュール「HSDIP20」だ。HSDIP20は、高い放熱性能の絶縁基板を内蔵しパッケージの発熱を抑制。実際に、OBCで一般的に採用されるPFC回路(SiC MOSFETを6点使用)において、上面放熱タイプのディスクリート品6点と6in1構成のHSDIP20を比較した場合、35W動作時では発熱を37%低減したことが確認できたという(左下図)
さらに、この高い放熱性能および低オン抵抗のロームの第4世代SiC MOSFETによって、小型パッケージでありながら大電流対応を実現。上面放熱タイプのディスクリートと比べて3倍以上、同じDIPタイプモジュールの競合品と比較しても1.4倍以上という「業界トップクラス」(同社)の電力密度を達成している。
この高電力密度実現によって、OBCのPFC回路において、ディスクリート品を用いた場合と比較して実装面積を約52%と大幅に削減が可能になった。また、一般的なOBCの回路構成(二相フルブリッジ PFC+LLCコンバーター)においては、ディスクリート品であれば14個必要なところ、6in1および4in1構成のHSDIP20を3つ組み合わせにることで構成可能になるなど、シンプルかつ小型な電源回路の構築が実現するという。
HSDIP20は750V耐圧品で6品番、1200V耐圧品で7品番をラインアップ。サンプル価格は1個1万5000円(税別)だ。また、ダブルパルステスト用と3相フルブリッジ用に2種類の評価キットを用意している。なお、HSDIP20のメインターゲットにはOBCおよびDC-DCを据えるが、PFCやLLCコンバーター等の電力変換回路は、産業機器分野の一次側回路においても多く存在しているため、産業機器分野や民生機器分野においてもアプリケーションの小型化などで貢献可能だとしている。
ロームは2025年4月から当面月産10万個の体制でHSDIP20の量産開始していて、生産拠点は前工程がローム・アポロ筑後工場(福岡県筑後市)およびラピスセミコンダクタ宮崎工場(宮崎県宮崎市)で、後工程はタイのROHM Integrated Systemsだ。
ロームは今後、OBC向けのSiCモジュールとして、2025年中に2in1構成のDIPタイプモジュールをリリースする予定で、さらに2026年には自動実装が容易な面実装タイプの2in1品を、2027年以降にはさらなる小型化を可能にするゲートドライバー内蔵のSiC IPMを計画。市場の要求に対応する製品を続々と投入し、競争力を高めていく。
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