深刻化する米中の技術冷戦。監視カメラなど向けのセキュリティ関連ソリューションを手掛けるNabtoのCEOは、中国製IoT機器やコンポーネントの安全性を見直すべきだと主張する。
IoT分野は米中の技術冷戦の真っ只中にある。しかし、長年にわたる生産依存を解消するのは容易ではなく、特にデバイスが家庭や職場の中心的な存在になる中ではなおさらだ。次に何が起こるのだろうのか。
ほとんどのコネクテッドデバイスとその内部コンポーネントが中国製であることは否定できない。さらに、これらのシステムには、文書化されていないハードウェアコマンドや非公開の位置情報トラッカーなど、セキュリティやプライバシーの脆弱(ぜいじゃく)性が既に存在している。何十億台ものデバイスのバックエンド機能についても疑問が残る。
これらのユビキタスなエンドポイントが、スパイ活動やネットワーク侵入、さらに技術戦争の手段になる可能性は否定できない。前例のない激動と不確実性に直面するこの瞬間に、技術リーダーは一歩引いて、この分野を支えている中国製ハードウェアを批判的に検証する必要があるのではないだろうか。
第2期ドナルド・トランプ政権の誕生から数カ月で、状況は急激に変化している。新政権は最初の100日間で、孤立主義的なトーンを打ち出した。特に中国は30%以上の関税が課され、大きな打撃を受けている。この影響は既に現れている。Temuは輸入手数料を上乗せして消費者価格を2倍以上に引き上げ、中国の小売業者は広告費を大幅に削減し、企業は国内フルフィルメントモデルへの移行を急いで進めている。
わずか数週間で、関税は経済的にも政治的にも影響を及ぼしている。消費者向けデバイスの価格高騰や、メーカーの運営の困窮を引き起こし、重要な局面における両国間の緊張を高めている。こうした状況の背景には、IoTにおけるプライバシーとセキュリティの脆弱性があるが、オープンな議論の欠如と報復的な措置の応酬によって、中国製デバイスのセキュリティ上の影響に注目が集まっている。
こうした地政学的に不安定な時期よりも前から、政府関係者や評論家は中国のIoTに目を光らせていた。第一に、中国製のデバイスは、デフォルトのパスワードや常時接続、ソフトウェアのサポート非対応により、容易にハッキングされる可能性がある。第二に、中国政府が中国国内で事業を展開するメーカーに対し、デバイスのユーザーや企業の情報収集を要求する可能性があるというリスクもある。第三に、多くのメーカーが最小限の透明性しかない、独自のファームウェアを構築しているため、脆弱性の評価やバックドアの検出が困難である。このことは、10年程前に何百万台もの中国製スマートテレビが、近隣のネットワークや接続バイスに関するデータをひそかに収集していることが明らかになったことからも明白である。企業ネットワーク上の中国製IoTデバイスの数が前年比で40%増加しているため、こうした問題は特に懸念される。
問題を複雑にしているのは、デバイスの製造から完成に至るまでの監督体制の欠如だ。この問題は、2023年に英国当局が中国製の外交用スマートカーの封印部品内に位置情報SIMカードが隠されていることを発見した際に、注目を集めた。このコンポーネントが車両の動きを送信していたかどうかはすぐには判明しなかったが、この事件は、英国の政治家や公務員の動きを監視するリモートアクセスを行おうとしているのは誰なのかという、深刻な疑問を提起した。
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