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微細化前倒しや3層積層の強化……「市場で勝ち切る」ソニーの半導体戦略「高密度化」が進化のけん引役に(3/4 ページ)

» 2025年06月17日 14時45分 公開
[永山準EE Times Japan]

「2層トランジスタ画素積層型CIS」も一例、3層積層技術の利点

 多層化では、SSSが強みとする積層技術を進化させた3層積層技術を活用する。3層積層では従来の画素とロジックの間に異なる機能を積層でき、さらなる特性強化が実現できる。

 指田氏は既に商品化している2層トランジスタ画素積層型CMOSイメージセンサーが1つの活用例だとしつつ、「これに限らず、3層の組み合わせにはさまざまな可能性があると期待している。今後の重要な技術進化軸だ」とさらなる展開を進める方針を示した。

多層化について 多層化について[クリックで拡大] 出所:ソニーセミコンダクタソリューションズ

 下図はプロセスノード適合化および多層化による特性強化の例だ。先端プロセスはさまざまな技術と組み合わせることで、感度/ノイズ、ダイナミックレンジ向上などを実現する。多層化では、RGB画素と被写体の変化のみを捉えるイベントベースビジョンセンサー(EVS)、ロジック回路を組み合わせることで、高精細かつ高フレームレートな動画撮影が可能としている。

プロセスノード適合化および多層化による特性強化の例 プロセスノード適合化および多層化による特性強化の例[クリックで拡大] 出所:ソニーセミコンダクタソリューションズ

 大池氏は「高密度化はイメージングとセンシングの融合にも寄与する。ベースとなる2Dイメージングの進化は必須として、その2Dイメージングに深度など3D、4D、5Dをワンチップで実現するには3層積層が不可欠だ。長期的にはモバイル以外のさまざまなアプリケーションにも展開が可能で、高密度化で培った技術はイメージセンサーの全般に寄与していく」と強調していた。

車載の多眼化は進む、26年度シェア43%に向け「順調」

 今後の収益の柱にすべく長期視点で取り組む「戦略事業領域」として位置付ける車載事業では、成長ドライバーは引き続き多眼化と説明した。車両の台数市場に対する車載カメラの数量市場の成長は、2030年度には2019年度比で7倍以上となる見込みだという。

 指田氏は「電気自動車(EV)をはじめとした車業界全体の動向は注視していく必要があるが、車の知能化に伴い、車載カメラの認識性能の重要性は確実に増している」と言及。車載カメラは動く被写体を認識する目的であり、ここでもセンサーの動画性能が重要となるとした。

車載市場での多眼化の予測車載カメラ性能の5つの進化軸 左=車載市場での多眼化の予測/右=車載カメラ性能の5つの進化軸[クリックで拡大] 出所:ソニーセミコンダクタソリューションズ

 特性の五角形を表現した場合に技術の起点となるのは、車載特有のダイナミックレンジおよびLEDフリッカー抑制の両立だ。この特性を前提としつつ、自動運転の高度化に伴い長距離を認識するニーズが高まっていることから、より小さな画素で多画素化することによる解像度の向上が進行。同時に画素を小さくすることで犠牲となる感度/ノイズの再強化も重要になる。

 他方では、ダイナミックレンジの強化のため複数フレームを合成する手法が採用されていて、読み出し速度も重要となっているという。ただ、読み出し速度の向上は消費電力の増加にもつながるため、センサーの高温特性や発熱対策の要求も高まっているといい、指田氏は「車載領域でも各特性のトレードオフを解消し、総合的に進化することが重要だ」と強調。「市場が拡大する中で、センサーの特性の総合力を一層強化し、グローバルの自動車メーカーやパートナーとのエンゲージメントを高めていく」とした。

 車載事業では第5次中計の最終年度となる2026年度に、金額シェアで43%という目標を掲げている。2024年度の実績は前年度から2ポイント増の37%となっていて、目標達成に向けては「想定通り進捗している」という。

 指田氏はまた、「車載領域は事業化から10年以上が経過し、ようやく収益貢献が見えてきた。第5次中計期間中の黒字化は、必達の目標として強く意識し引き続き事業運営を進めていく」と強調した。

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