東北大学を中心とする研究グループは、農業廃棄物の「もみ殻」と鉱山副産物の「パイライト(黄鉄鉱)」を原料とする「燃料電池用触媒」を開発した。未利用資源から高性能な機能性材料を生み出した今回の成果は、希少資源である白金(Pt)の代替となるばかりでなく、持続可能な材料を開発する新たな取り組みとして注目される。
東北大学の研究グループは2025年7月、農業廃棄物の「もみ殻」と鉱山副産物の「パイライト(黄鉄鉱)」を原料とする「燃料電池用触媒」を、秋田大学や北海道大学らと共同開発したと発表した。未利用資源から高性能な機能性材料を生み出した今回の成果は、希少資源である白金(Pt)の代替となるばかりでなく、持続可能な材料を開発する新たな取り組みとして注目される。
金属空気電池や燃料電池などは、「酸素還元反応(ORR)」を担う触媒材料の役割が重要となる。電池内の酸素反応をこれまで担ってきたのが高価で希少資源のPtである。そこで今回、供給リスクやコストの低減に向けて、安価で持続可能な代替材料の開発に取り組んだ。
東北大学を中心とする研究グループはまず、パイライトからの鉄イオンを含む水溶液に、もみ殻を一晩浸した。その後、水熱炭化することで鉄を内部に分散させた。次に、窒素雰囲気下で高温炭化を行う工程で尿素を添加し、Fe-N構造の形成を促す窒素ドープを行った。
こうした2段階プロセスによって、鉄と窒素が効果的に導入され、反応性に優れた構造が形成されたとみている。また、もみ殻に含まれる非晶質シリカが構造の安定化に寄与したことにより、全体として高い耐久性を実現できたとみている。こうして得られた触媒は、酸性・中性・アルカリ性といった全ての条件下で、白金触媒に匹敵する起電力(オンセットポテンシャル)を示した。
さらに、酸性条件下で14時間の連続運転試験を行ったところ、白金媒体(40wt% Pt/C)を上回る電流保持率となり、耐久性に優れていることを確認した。
今回の研究は、東北大学学際科学フロンティア研究所の中安裕太助教と阿部博弥准教授、同大学院工学研究科のEdwin Nyangau Osebe大学院生と渡邉賢教授らによる研究グループおよび、秋田大学や北海道大学、物質・材料研究機構などが共同で行った。
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