RA8P1には、TSMCの22nm ULL(Ultra-low Leakage)プロセスを採用。これまでに発売した「RA8M1」「RA8D1」などは40nmプロセスを採用した「RA8シリーズ第1世代」で、今回の新製品が「第2世代」の先駆けになるという。今後はさらなる微細化によって性能や容量の向上を図る。
CPUは1GHz動作のCortex-M85と250MHz動作のCortex-M33のデュアルコアで、「32ビットマイコンとして業界最高クラス」(ルネサス)だという7300CoreMarkを実現。Cortex-M85のみのシングルコア品も用意する。さらに、AIアクセラレーターとしてEthos-U55を搭載している。葛西氏は「Ethos-U55はCorex-M55/M85と親和性が高い。M55と組み合わせた製品は市場でちらほら見かけるが、M85との組み合わせは業界で初めてだ」と説明する。推論処理をCPUからNPUにオフロードすることで、CPUはシステム制御やモータ制御などに集中できる。なお、ルネサスは今後MPUでもEthos-U55を採用する予定だ。
高度なエッジAIではAI推論ももちろん重要だが、音声のエコーキャンセルやノイズ抑制、画像のリサイズや輝度調整、センサー情報の時系列集計など、前/後処理も非常に重要だ。Cortex-M85はArmのベクトル拡張技術である「Heliumテクノロジー」を搭載しているので、こうした処理を高速に行える。
AI処理性能は256GOPS。Cortex-M85のみを使って動作周波数1GHzでAI推論を実行した場合に比べて、Ethos-U55を使用して動作周波数500MHzで同じ推論を実行すると、最大で35倍処理速度が向上したという。動作周波数は下げているので、その分消費電力を抑えられる。
Ethos-U55は代表的なニューラルネットワークに対応しているが、進化が速いことから今後は対応していない新しいモデルが登場することも考えられる。その際はCPUで推論を行うという。「Ethos-U55とCortex-M85のシームレスな連携がコンセプトだ。これが自社独自のAIアクセラレーターを使わずArmのIP(Intellectual Property)を使う理由でもある」(葛西氏)
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