近畿大学は、半導体材料の「ペロブスカイト量子ドット」に対し、外部から磁力を加えることで「円偏光」を発生させ、その組成を変えるだけで「マルチカラー円偏光」を発生させることに成功した。加える磁力の方向を変えれば、全ての色について円偏光の回転方向を制御できることも明らかにした。
近畿大学理工学部応用化学科の今井喜胤教授と同エネルギー物質学科の田中仙君准教授らによる研究グループは2024年1月、半導体材料の「ペロブスカイト量子ドット」に対し、外部から磁力を加えることで「円偏光」を発生させ、その組成を変えるだけで「マルチカラー円偏光」を発生させることに成功した。加える磁力の方向を変えれば、全ての色について円偏光の回転方向を制御できることも明らかにした。
円偏光は、3D(3次元)表示用有機ELディスプレイ(OLED)などに向けた新技術として注目されている。通常、発光体から出てくる光は、右回転と左回転の円偏光がある。片方の円偏光だけを得る方法としてこれまでは、鏡面対称構造であるキラル(光学活性)な発光体の対を用いるのが一般的であった。
これに対し研究グループは、アキラル(光学不活性)な分子を用いても、円偏光を発生させる手法をこれまで開発してきた。今回は、室温で高い発光効率を示す5種類のアキラルなペロブスカイト量子ドットを用意し、より安価にマルチカラーの円偏光を発生させることに取り組んだ。
実験では、溶液中のペロブスカイト量子ドットに、外部から磁力を加えたところ、円偏光を発生させることに成功した。しかも、磁力の方向を変えると光の回転方向が反転。単一の発光体から、右回転円偏光と左回転円偏光の両方を選択的に取り出せることを確認した。
さらに、ペロブスカイト量子ドットの組成を変えたところ、円偏光発光の色調(波長)を青色から赤色へと300nm以上も変えることに成功した。
将来的に、高度なセキュリティ認証技術の実用化や、3D表示用OLEDの製造コストの削減につながることが期待されるとしている。
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