近畿大学は、デジタルコヒーレント光通信用受信器に搭載する「2ステージ復号アーキテクチャ受信回路」を開発した。実証実験により、従来方式と比較しエネルギー効率が2倍になることを確認した。
近畿大学産業理工学部電気電子工学科の今宿亙教授らによる研究チームは2023年12月、デジタルコヒーレント光通信用受信器に搭載する「2ステージ復号アーキテクチャ受信回路」を開発したと発表した。実証実験により、従来方式と比較しエネルギー効率が2倍になることを確認した。
近畿大学は、総務省が進める「グリーン社会に資する先端光伝送技術の研究開発」事業の一部を受託し、2022年度より「Beyond 5G/6G時代を見据えた次世代超高速光ファイバーアクセスネットワーク技術」に関連した研究を行っている。今回の成果はその一つである。
将来の光ファイバーアクセスネットワークシステムは、赤外光(約200THz)の光波パルス位相に情報を載せて伝送する「コヒーレント光通信方式」が検討されているという。このため受信器側では、光波パルス位相を正しく推定し、その上で受信情報の内容を正しく判定して、変調された信号を復調する必要がある。
研究チームは今回、DSPに実装して動作させる「2ステージ復号アーキテクチャ受信回路」を独自に開発した。受信器側でこの技術を用いると、光波の点灯タイミングと光波の位相の変化を読み取り、送信された光信号を正確に復調できるという。
実証実験では、独自技術で拡張した受信器と195THzの赤外光レーザー光源、長さ20kmの石英ガラス光ファイバーを用いた。また、同じ送信情報量に対して必要な光波エネルギーを削減できる光信号生成方法「時間領域単一搬送波インデックス変調方式」を採用した。開発した受信回路もこの方式に向けて機能を拡張した。
今回用いた時間領域単一搬送波インデックス変調は、8つの時間スロットを1セットとする時間フレームにおいて、1つの時間スロットのみに光波を点灯させ、光波の位相を2種類に変化させてデジタル情報符号を伝送する「時間領域単一搬送波(8,1,二相位相シフトキーイング)インデックス光変調信号」である。
この結果、基本伝送レートが毎秒25億ビットの「二相位相シフトキーイング光変調信号」に比べ、今回の方式は情報伝送レートが半減するものの、1ビット当たりの情報伝送に必要なエネルギーを半分にできることを確認した。これにより、光アクセスネットワークシステム全体のエネルギー消費を、従来に比べ約20%節減できる可能性があるという。
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